あきさねゆうの荻窪サイクルヒット

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1分で分かるサイクルロードレースの戦略〜平地スプリント編〜

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具体的なサイクルロードレースの戦略について解説して行きます!

今回は、『平地スプリント編』です。

レースの序盤・中盤・終盤とわけて、各パートでの戦略を説明します。

スプリントは最高速度時速70キロオーバーで争う、車上の格闘技です。

目次

序盤:大人数で逃げられないようアタックを潰す

ステージレースの場合は特に、各チームごとに様々な思惑を持っています。

総合力に劣るチームは、万が一の逃げ切り勝利やアピールを狙って逃げに選手を送る戦略をとることが多いです。

そのため、レース序盤は逃げを打つために、アタック合戦となります。

最終的にスプリント勝負に持ち込みたいチームは、逃げグループに逃げ切りの可能性が高くなるような強い選手が入らないように、また大人数で逃げられないようにアタックを潰します。*1

そこで、スプリンターチームは集団の先頭に位置取りをします。

強そうな選手がアタックしたら加速し、大人数が逃げそうになったら加速して逃げに追いつくことで潰します。

そうして、この選手たちなら逃がしてもいいかな、という風にアタックが決まったら落ち着きます。

なのでスプリント勝負を挑みたいチームのアシスト陣は、レース序盤からフルスロットルで働くことになります。

度重なるアタック合戦を潰し合っていると、登り基調のコースなのに平均時速50キロオーバーとかもザラにあります。

ワールドツアークラスのチームが本気で集団を牽くと、それだけで千切れる選手が出てくるほどの強さです。

中盤:途中の登りでエースが遅れないようにアシスト

スプリンターは陸上の短距離選手のように、ムキムキな筋肉を身にまとっているため、体重が重いです。

そのため、登り坂が非常に苦手です。

万が一、登り坂でエーススプリンターが遅れをとった場合に、前を牽くこともアシストの務めです。

傾斜がキツい坂道が登場する場合は、エーススプリンターが集団から遅れがちです。坂を登ったあとの下り坂や平地で集団に追いつくためにエースの風よけになることもアシストの仕事です。

ほとんど登り坂が登場しないフラットなコースの場合は、落車に巻き込まれないよう安全なメイン集団の前方に位置取りしてエースを守ることが多いです。

終盤:逃げ集団を捕まえて、トレインを組んでエースを発射

残り50kmを切ってくるあたりで、徐々に逃げ集団との距離を詰めて行きます。

残り20km〜数キロくらいになったところで逃げ集団を吸収します。ここからがアシスト陣の最大の見せ場です!

また新たな逃げを打たれないように、集団のスピードを上げます。*2

一列棒状に選手が並んで先頭を走ります。

←先頭・ゴール方面

⇐アシスト アシスト アシスト エース

みたいな感じです。

この時スピードは時速50キロ前後で走ります。先頭を牽くアシスト選手には時速50キロ以上で数分間出力し続けることが出来る能力が求められます。

- YouTube

こちらの動画を元に、画像で解説してみます。

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アシストはほぼ全開で踏んで行きます。限界が来たアシストは、列から逸れて仕事を終えます。*3今度は2番目に位置していたアシストが鬼のように牽いて行きます。

中央の赤いジャージを着たチーム(コフィディス)がトレインを組んで、3番目に位置するエース(ブアニ)を好位置に引き上げます。その隣の背中に「K」と書かれた赤いジャージを着たチーム(カチューシャ)もトレインを組んでいることが分かります。(エースはクリストフ)

このように、スプリント勝負を狙うチーム同士で、熾烈な位置取り争いが起きます。

この際、お互いが接触して、時にはヘッドバッドをかましながら*4、好位置をキープしていきます。アシストだけでなく、エースも強い身体と尋常ならざる闘争心が重要です。

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↑コフィディスのエース・ブアニが、カチューシャのエース・クリストフにヘッドバッド!時速50キロ以上は出ているのに…

残り1キロを切ってくると、いよいよ最終盤です!アシストがいないスプリンターは、他のチームのトレインの背後に勝手について好位置を狙うという作戦もあります。(通称:タダ乗り)

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アシストが限界までエースを牽いて、タイミングよく発射します!*5

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あとは、ひたすらもがいて、誰よりも先にゴールを切るだけです!この時、時速70キロは越えています。

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そして、ゴールです!!

今回の勝負は、終盤から好位置をキープし続けたコフィディスのエース・ブアニの勝ちです。

エースには最後の数百メートルで、瞬間的に時速70キロ以上を出すことが出来る能力が求められます。

スプリントは完全に格闘技

アツいスプリント勝負は何度でも繰り返して見たくなるような、激しい競り合いが魅力です。

例え好位置にいなかったとしても、爆発的なスピードで抜き去るチートのようなスプリンターも存在します。

サイクルロードレースのスプリント勝負は最も派手で、最も分かりやすい『最速』を決める瞬間です。

そんなスプリント勝負にするためには、エーススプリンター自身の脚力も重要ですが、好位置までエースを運ぶアシストの役割も非常に重要です。

そして、最後の発射台となるアシストはエーススプリンターに勝るとも劣らない瞬発力を持っています。まさに相棒です。

スプリントステージを観戦する時は、アシストの動きに注目して見ると面白いと思います。

スプリンターと言えば、個人的にはカベンディッシュを思い浮かべます。この人の闘争心は尋常ではありません。頭突き上等ですw

・1分で分かるシリーズ

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・サイクルロードレースの魅力を伝えたい記事

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ヨーロッパのトップチームで活躍する日本人選手である新城幸也選手に会ったお話です。

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サイクルロードレースの雰囲気が伝わるように書きました。

*1:エーススプリンターによる勝利にこだわらない場合や、チームが疲れていて集団の先頭を牽きたくない場合は、あえて逃げに選手を送りこむこともあります。

*2:カウンターアタック封じと言います。

*3:画像ではスカイのアシストが列を離れているが、スカイはスプリントで勝つことが目的ではなく、総合優勝狙いのエースのフルームを守るために先頭を位置取りする作戦だった。

*4:斜行、進路妨害は反則なため、度が過ぎると降格処分もあります。しかし、スプリント前のぶつかり合いは度々発生しています。

*5:ちなみに動画のカチューシャトレインは、エース・クリストフの発射タイミングをミスっています。