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オランダが電気自動車を普及させるために必要なことは、原子力発電の推進である

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gigazine.net

オランダで、将来的に電気自動車以外の販売を禁止する法案を提出・可決されるそうです。

大変素晴らしい動きだなと、思います。

技術的に無理なんじゃない?
そもそも100%電気自動車にしちゃうと、かえってCO2を排出するのでは?

なんて意見が、ネット上に散見いたします。

わたしは、全面的にこの試みを支持したいと考えます。

その理由を、お話していきたいと思います。
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これまでのオランダの環境への取り組み

現在のEU諸国で、1960年代に酸性雨による環境被害がひどくなったことを発端にして、環境問題への取り組みが盛んとなりました。

オランダは国土の4分の1が海抜0m以下であり、特に地球温暖化問題には敏感でした。

京都議定書が発行される以前である1990年には、先進各国に2000年までにCO2排出量を20%減らすように要請したそうです。要請しただけではなく、国内においてはガソリンに対して増税しました。

このように自動車への規制を年々強めていき、現在ではアムステルダムのような都市部においては排除に近い形で規制を進めています。

具体的には、

  • ガソリンへの税金増額
  • 都市部から駐車場を減らす(停めたくても停められないようする)
  • 自動車の代替交通として、LRT・自転車専用道路の整備を進める

という政策が取られていました。

結果として、現在のオランダでは自動車利用が減り、自転車を利用する人が多くなりました。自転車の保有台数は一人あたり1.3台と世界一の数字を記録しています。*1

なお、自動車の利用自体はオランダ国内での需要はまだまだ多いです。

国民一人あたりの自動車保有台数は0.53台となっています。

日本0.59台、フランス0.58台、ドイツ0.57台であり、隣国のベルギー0.56台、ルクセンブルク0.74台、デンマーク0.48台というふうに、特別少ないわけではありません。

高速道路もよく発達していて、高速道路密度はヨーロッパの国々の中では最大となっています。都市郊外での自動車利用の需要は大きいです。

都市部においては、自動車から自転車への移行をうまく進められたので、次は郊外での自動車をガソリン車から電気自動車に置き換えようという動きです。

オランダはこれまでも思い切った法律を先に決め、後からインフラを整えていくというスタンスで、政策を実行してきました。

アメリカのマスキー法に対する本田技研工業の対応

1970年、アメリカで自動車の排気ガス規制の法案、通称マスキー法が可決されました。この規制は当時の自動車メーカーにとって、不可能と思える厳しい基準でした。

当然、自動車業界は猛反発をしますが、本田宗一郎率いるホンダはこの規制をクリアしたエンジンを、世界で唯一開発することに成功します。1970年頃のホンダは、日本国内でも中小メーカーの一つという規模でした。

結局のところ、マスキー法はアメリカの大手自動車メーカーからの反発が大きすぎて廃案となりましたが。

今回のニュースでは、10年後までに電気自動車の供給が間に合わないのでは?という声が多いように思えますが、その気になれば10年で間に合うと、わたしは考えます。

なぜなら、ホンダはマスキー法の件をきっかけに、アメリカでの市場開拓に成功し、今日のような巨大自動車メーカーに成長したからです。

当時のホンダは中小メーカーの一つでありました。各社が無理と言う中でマスキー法をクリアする自動車を開発すれば、アメリカの自動車市場のシェアを大きく獲得出来るという算段と、自動車メーカーとして環境問題に真摯に取り組むというミッションの実現と、2つの想いがあたのです。

オランダが本気で電気自動車のみ販売をすると言うのであれば、安価で高性能な電気自動車の開発に成功すれば、オランダの自動車市場をシェアを大きく獲得できますし、オランダの環境問題の取り組みに共感した企業が、電気自動車の開発をミッションとして取り組む可能性も十分あり得ると思います。

すでにテスラモーターズは高性能な電気自動車は開発していて、一般販売され、一般利用されています。

電気自動車の普及における最も大きな課題は、電気を供給するスタンドの設置です。この課題は100%電気自動車のみにするなら、国内からガソリンスタンドを排除して、電気スタンドに置き換えることで解決出来ます。

電気自動車の動力源である電気を、原子力発電で生産すればよい

オランダにおける発電量のうち、火力発電が占める割合は90%を越えています。

火力発電によって生み出した電気を送電して自動車を動かす仕組み(=電気自動車)と、石油を燃やして自動車を動かす仕組み(ガソリン車)を比較すれば、当然後者(ガソリン車)の方がエネルギー効率は良いでしょう。

どちらにせよCO2を排出して、地球温暖化が進むと海抜0m以下の国土を持つオランダにとっては死活問題なので、石油エネルギーに変わるエネルギーの利用を推進することが非常に大事です。*2

そこで原子力発電です。

最新の原子力発電の技術は、核燃料の反応がある一定の温度でしか反応しないように出来ていて、何かしらの原因で制御が効かなくなって反応が進み温度が上昇すると、反応が緩やかになる。という風にメルトダウンが物理的に起き得ない技術も開発されているのです。

これまでは原子炉の冷却に水を使うタイプの原子力発電が主流だったため、原子力発電所は臨海部や川辺に作らねばならないという立地上の制約がありました。

最新型では冷却を必要としない(勝手に反応は収まるから)ので、立地上の制約もなく、どこにでも作ることが可能です。

しかし東日本大震災があった影響で、この最新技術が陽の目を見ることはなく、開発は中止に追い込まれつつあります。*3また、オランダも原子力発電に関して新たに予算を取ることは考えていないとのことで、新たに原発を設置するような動きはありません。

次の候補は風力発電です。

オランダは国土が平地ばかりで、風が強い国です。伝統的な風車があるくらいですから。

当然、オランダでは風力発電は推進されています。ところが、風力発電を推進するとかえって火力発電を必要とする事態に見舞われているのです。

風が強いと言っても、1日中絶えずいい感じの風が吹くわけではありません。強く吹くときもあれば、弱く吹くときもあるでしょうし、風が止まることだってあります。

風が吹かないから電気発電出来ませんでした。とは言えないわけで、風が吹かない時のバックアップとして、火力発電を待機させる必要が生じます。

さらに風が強いことは、風力発電にとっては厄介な問題なのです。

運動エネルギーは速度の二乗に比例するので、風速5m/sの時のエネルギーと風速10m/sの時のエネルギーは4倍違います。

発電のタービンをより速く回せば、より多く発電出来るわけですが、あまりにも速く回しすぎると壊れてしまいます。

なので風が強すぎると、タービンの回転を抑えるために、逆に電気を使わないといけないので、あまり効率が良いとは言えません。

結果として、コストが上がり、無理やり税金で何とかしているのが現状だそうです。

技術的な問題というよりは、自然現象による限界なので、オランダで風力発電を推進していくことは難しいのではないかと思います。

国土に高低差がないので、水力発電は難しいです。ソーラー発電もオランダは天候の良い国ではないため、例えエネルギー変換率の高いソーラーパネルが開発されたとしても、効率の良い手段ではなさそうです。

したがって消去法的に原子力発電を推進する必要があると、わたしは考えています。

まとめ

結局、電気自動車に供給するためにエネルギーをどうするかという問題は原子力発電に対する根拠の無い世論の反対、人々の不安が課題でしょう。そして、それらは根強い問題です。

わたしは『今この世界を生きているあなたのためのサイエンス』という本を読んで、放射線と原子力に対する認識を改めました。

放射線も原子力も危ないものではありません。今、日本にもあるような、古いタイプの原子力発電所に技術的な課題が存在するだけです。

オランダは様々な政策において、世界でも最先端・独自の路線を行っているからこそ、最新型の原子力発電の推進をして行って欲しいなと思います。

そうすれば、2025年までに電気自動車以外の販売規制を実現し、ゆくゆくは電気自動車普及率100%となり、CO2排出を大きく改善することが可能になると思います。

世界中の国々が抱える環境問題の解決策を具体的な政策結果で世界に示すことが出来ます。

そのような期待をしつつ、あと数時間後にはオランダに旅立って来ます。実際に現地でオランダの交通行政やオランダ人の気質を肌で感じ取って来たいと思います!

では、またアムステルダムで会いましょう!

この本はマジでおすすめです!

・オランダに関して、他にも書いている記事です。

www.akisane.com
www.akisane.com

*1:オランダの自転車数2270万台、一人あたりなんと1.3台

*2:オランダが石油の大部分を輸入で補っていることも大事なポイントです。

*3:ドイツの会社が開発した技術なのですが、ドイツは2022年までに原発全廃を決めているため、開発が滞っていると思われます。