こちらのブログ記事を読んで、
国に自転車政策について具体的に提言できるチャンスがあることを知りました。
素晴らしいです。
以前、疋田さんの著書に書いてあったことをお話しします。
道路交通法が『自転車は原則として歩道を走ること』という風に改正されそうになったことがあります。
これは自転車にとってだけではなく、歩行者にとっても悪法だということで、様々な提言をしていった結果、
『自転車は原則として車道の左端を走ること』
と改正されることになりました。
疋田さんはメディアの方なので、主張をどう展開するかということには長けていたと思いますが、個人レベルでも政策へ提言できて、実際に変えたことは事実です。
ということが脳裏にあったので、この機会に私も提言を行ってみたいと思いました。
少しでも自転車を含む日本の交通インフラにとって良い未来が訪れればなと思います。
本提言の大前提
わたしは便利で暮らしやすい世になればいいなと思っています。
自転車による交通事故死者数世界ワースト1位となっている現状では、暮らしやすいとは言えません。
スポーツ自転車愛好家にとって暮らしやすい世界にしたいわけではなく、みんなが安全に暮らせればいいと思っているだけです。
自転車による交通事故が多い原因は、あまりにも多くの自転車が歩道を走っていることです。
自転車は車道を走行するより、歩道を走行した方が7倍交通事故のリスクが高まるとの実験結果もあります。
そもそも、自転車が歩道を通行できる条件は、次の通りとなっています。
自転車は車両であるため、歩道が設けられた道路においては、基本的に車道を通らなければならない。
ただし、次のいずれかに該当する場合には、歩道を通行することもできる。
・「自転車通行可」の道路標識または「普通自転車通行指定部分」の道路標示がある歩道を通るとき
・運転者が13歳未満もしくは70歳以上、または身体に障害を負っている場合
・安全のためやむを得ない場合
自転車が歩道を通行する際には、「徐行義務」が生じます。
この「徐行義務」違反を2回以上すると、自転車講習を受けなければならなく、従わない場合は5万円以下の罰金です。
徐行の定義は、自動車の場合は時速10km程度になります。
よって、自転車も10km/h以下で走行することを、徐行と言って差し支えないと思います。
自転車で10km/hで走ることは、体感的には非常に遅く感じます。
歩道を走行する自転車で、10km/h以下で走っている人はほとんどいないと思います。
それこそ、13歳未満または70歳以上の運転者であれば、10km/h以下で走っていてもおかしくないと思いますが。
さらに言えば自転車という乗り物の特性上、10km/h以下で走行すると、車輪のジャイロ効果が低くなるため、非常に不安定になります。
直進安定性に欠けた状態で走行すると転倒のリスクが高まるので、そもそも低速で走行することが理にかなっていません。
ならば、車道を高速度で走行することが安全で乗りやすいと言えますし、わざわざ交通事故のリスクが車道に比べて7倍高くなる歩道を走るメリットが全くありません。
とはいえルールで決まっているから車道を走れと言うには、日本の車道が自転車にとって走りやすいとは言えない状況が一番の問題であると私は考えています。
また、このような自転車の事情を国民の多くは知る由にないことも問題だと考えています。
したがって、自転車が車道を走りやすい環境を整えること、自転車の啓蒙活動の促進することによって、安心で豊かな暮らしのために、自転車を活用しやすい世をつくることが出来ます。
そこで、東京都が作成した
『改定東京都自転車安全利用推進計画(中間案)の概要』
http://www.metro.tokyo.jp/INET/BOSHU/2016/02/DATA/22q29300.pdf
を元に、各項目に対して意見を述べさせていただく形で、提言をさせていただければと思います。
1 死者数減少に向けた取組の強化
○ ヘルメット着用の促進
・致死率の高い高齢者へ、安全教育と合わせた啓発を拡充
(ex.シルバー人材センター等との連携、同居家族による働きかけ)
→高齢者の死亡事故は出会い頭事故が多いそうです。根本的に歩道を自転車が走るから、出会い頭の事故が起きると思います。
そういった出会い頭の事故があった際に、ヘルメットの有無で大怪我のリスクを減らすことは可能ですが、もっと根本的に出会い頭の事故を減らす施策が効果的であると考えます。
まず歩道を走る自転車の数を減らすことが第一で、車道走りやすくすることが必要です。
そのためにすべきことは、以下の四つです。
- 車道の路上駐車車両の取り締まり徹底(自転車が車道を走りやすくするため)
- 電動アシスト自転車の購入促進、補助金制度の導入(脚力のない人でもスピードを出して移動できるように)
- 警察官が自転車で移動する際に、必ず車道を走るようにすること(公職が率先垂範を心がけること)
- 車道を自転車の走りやすい空間にすること(『自転車推奨ルートの整備等による、自転車が走行しやすい空間の確保』にて詳細を記載しています)
・人口当たりの事故件数の多い高校生に対する普及促進策を拡充
→歩道で無茶な走行をすること、並列走行をしていて起きる事故が多いように見受けられます。
後述しますが、罰則強化しかないと考えます。
自転車も扱い次第で凶器になるのですから、自動車と同様に罰則を強化して、「ちょっとくらいいいや」を無くす必要があると考えます。
○ 特に危険な違反行為等に対する取締り、指導等の強化
・信号無視等、致死率の高い違反行為に対する取締りを強化
→罰則強化が必要です。信号無視する自転車乗りの心理は、「これくらいいいだろう」と思っているからに他なりません。
自動車に乗っている人が、どんなにガラガラの信号でも信号無視しないのは、免停・罰金等の厳しい罰則が待っているからです。
自転車で信号無視した場合、3万円以上の罰金を科せばいいと考えます。
登録番号から住所・氏名は追えるはずなので、再犯にはより厳しく5万、10万円と厳しい金額を請求すれば、うかつに信号無視できなくなることでしょう。
・「自転車安全利用指導員(仮称)」による街頭での効果的な啓発・指導等
→指摘することは重要だが、結局人がいないところでは危険運転すると思います。
上記の通り罰則強化が最優先かつ、効果的であると考えます。
○ スポーツタイプの自転車利用者に対する啓発の強化
→スポーツタイプの自転車利用者には、むしろ交通マナーが良い人もいます。
特にロードバイクに乗る人は、交通ルールを熟知している人が多いです。
スポーツとして捉えている以上、サッカー選手がサッカールールに詳しいことと同様に、スポーツ自転車乗りは交通ルールに詳しくなければならないからです。
スポーツタイプの自転車利用者=マナーが悪いと思われているのは、ピストと呼ばれるタイプの、元々競輪で使われているタイプの自転車乗りのイメージが悪いからだと思います。
ピストは、競輪というスポーツにおいてブレーキが不必要なため、ノーブレーキで乗ることがカッコいいみたいな風潮がありました。
オシャレだからピストに乗るという発想をする人と、スポーツとしてロードバイクに乗るという発想をする人は、そもそもの考え方のアプローチが全くことなります。
前者はオシャレに見られたいという自分中心思考なのに対し、後者はスポーツとして楽しむためにルールを熟知します。
ちょっと極論かもしれませんが、ここではアプローチの違いがあることと、スポーツする人はルールを知らないわけにはいかないということを理解していただければと思います。
ロードバイク乗りは、ロードバイク乗りのコミュニティ内で、情報交換をし、路上でのマナーを教授しあっています。
しかしながら、自転車に詳しくない人は、ロードバイクとピストの区別がつきません。
したがって、まずはファッション感覚で自転車に乗っている人たちを啓蒙すべきであり、そのために効果的なことは以下の二つです。
- ヘルメット着用の義務の徹底(ファッション感覚な人はヘルメットをしていない傾向にある)
- 信号無視等交通ルール違反への罰則強化
- 違反者を大々的に報道して、ルールの周知を図る(以前、ノーブレーキピストに乗って摘発された芸能人の話以降、ノーブレーキピストは減少したため)
2 事故数減少に向けた取組の強化
○ 成人層など啓発が行き届いていない世代への広報を強化
・自転車販売店と連携した販売時等における啓発を強化
(ex.自転車購入者向けのチェック様式の作成)
→自転車販売店と連携することは効果的であると考えます。
特にいわゆるママチャリと呼ばれるような、シティサイクルを乗る人にこそ、啓発が必要と考えます。
シティサイクルに乗る人たちが、最も交通ルールの理解に乏しいと思います。
そもそも平気な顔して歩道を走っていること自体、交通ルールを理解していないと判断せざるを得ません。
外国から来た人たちは、歩道を高速で走る自転車を見て驚愕するそうです。
なんて野蛮な国なのかと。
日本、特に東京は外国人観光客が年々増えていますので、観光立国をアピールするためにも自転車マナーの改善は急務と言えましょう。
歩道を自転車が走っている現状がいかにおかしいかをもっと考えるべきです。
そういった層へ働きかけるという意味での、啓発活動には大賛成です。
スポーツタイプの自転車の購入層に働きかけても効果はありません。
ルールの理解は、言われるまでもなく自分でやるからです。
そして、特に啓発すべきルールは以下の通りです。
(一部ルールではないものもあります。)
- 車道の左側を走行すること(車道の右側走行、つまり逆走禁止であること)
- 前照灯だけでなく、尾灯をつけること、または反射材を身につけることが自動車に自分を認識してもらうために効果的であること
- ヘルメット着用すること(いざという時に、自分の頭蓋骨の代わりに割れてくれる代物である)
- ハンドサインを覚えること(駐車車両の追い越しの時に自動車とのコミュニケーションが取れるなどの効果)
また、ルール啓蒙とは観点が異なりますが、交通ルールから削除してほしいものは、「警音器(ベル)の使用」についてです。
自転車の利用において、ベルを使用する機会は
- 歩道において、前方に歩行者が道をふさいでいて邪魔な場合
- 歩道において、歩行者や速度の遅い自転車を追い越す時
- 歩道において、見通しの悪い交差点に差し掛かった時
- (道路交通法のルール上)「警音鳴らせ」「警笛区間」の道路標識がある箇所
くらいしか思いつきません。
4番目の「警音鳴らせ」「警笛区間」の道路標識は都内で見かけたことがありません。
1~3番目は歩道を走っているから必要なのであって、車道を走る際に必要だなと思う機会はありません。
万が一飛び出しがあった時など、ハンドルを握っている手を離して、警音器に手を伸ばして鳴らすなんて、咄嗟の行動は練習していない以上、絶対に出来ませんし、片手運転で同時に危険物を回避することになり非常に危険です。
大声を出して警告したほうが、どう考えても安全です。
よって、自転車に警音器をつける義務は無駄である以上に、かえって危険度を高めているものに他なりません。
自転車を軽車両というくくりにしていることから、本ルールが義務付けられていると思いますので、自転車は例外で不要にしていただきたいです。
むしろ、歩道で我が物顔で、ベルを鳴らして突き進む野蛮人を取り締まって欲しいとさえ思うので、歩道において過剰なベルの使用は交通ルール違反にしてもいいと私は考えています。
・レンタサイクル、シェアサイクル等の利用者に対する啓発の強化
→上記と同様です。
普段スポーツタイプでない自転車に乗っている層への啓発活動は効果的であると考えます。
・一般事業者による従業員への啓発を強化
(ex.安全利用の責任者の選任、責任者の人材育成、優良事業所の登録)
→上記の同様です。
普段スポーツタイプでない自転車に乗っている層への啓発活動は効果的であると考えます。
・「自転車安全利用宣言証」の協賛制度の導入により、安全教育の受講者を拡大
→上記と同様です。
普段スポーツタイプでない自転車に乗っている層への啓発活動は効果的であると考えます。
○ 学校における自転車安全利用教育の更なる推進
→こちらも上記と同様です。
普段スポーツタイプでない自転車に乗っている層、つまり幼少児・若年層への啓発活動は効果的であると考えます。
○ 自転車推奨ルートの整備等による、自転車が走行しやすい空間の確保
→すべての施策の中で最も効果的な取り組みであると考えます。
自転車が走行しやすい空間とは以下の要素を備えた道路です。
- 広い車線が確保された道路(片側三車線道路など)
- 駐車車両、路線バスが少ないこと(追い越す際に、後方から走行している自動車への対応に慣れが必要なので、慣れるまでは危険度が高くなる)
これだけです。
たまに、歩道の上に「自転車専用道路」をつくっている場所を見かけますが、全くの無用の長物であると言わざるを得ません。
具体的に申し上げますと、調布保谷線(都道12号線)の自転車専用道路は、税金の無駄だったと言えるほどに、効果のない専用道路に仕上がっています。
効果がないと言える理由は以下の通りです。
- 幅2m程度の空間で、自転車同士がすれ違って走る仕組みなっているため(ルールとは言え、見方を変えると逆走車両であり、同じ空間に逆走車両がいることが最も危険であるため)
- 歩道と隣接されているため、歩行者の飛び出しに気をつける必要があるため(車道を走る自転車は、ある程度歩行者へ注意を向ける必要が物理的に必要ないため、自動車への注意に専念できる安心感がある)
- 段差が多く、走行性を阻害しているため
したがって、わたしは今でも調布保谷線を自転車で走行するときは、車道を走っています。
自転車専用道路が完成してから車道の幅が狭くなり、工事前に比べて車道も走りにくくなっています。
歩行者にとっては歩道が狭くなり、自転車にとっては歩道も車道も走りづらくなり、誰も得していない道路になりました。
建設業者にお金が入っただけの道路です。
では、どんな自転車専用道路をつくればいいか申し上げます。
理想はデンマークやオランダのように、完全に自転車しか進入できない自転車専用道路を無数につくることです。
しかし現実的に東京都内において、新たに自転車専用道路をつくることは用地取得の観点から難しいと考えています。
よって、現在ある車道に一工夫加えて、自動車と自転車が走りやすい環境をつくればよいと考えます。
具体的には、車道外側線の外側の部分、路側帯に色を塗って「自転車専用」と書いて、明確に分けていただきたいです。
第一段階としては、それだけで十分効果あると考えます。
理由は自動車ドライバーからすると、なぜ歩道でなく道路の左側を自転車が走るのだ?と思っている人もいます。
そのため、自転車に幅寄せしてくるなど、悪質な運転をするドライバーもいます。
そういったドライバーに対し、路側帯に色を塗って、「自転車専用」と書くだけで、一発でここは自転車が走ってもいいんだとの理解を促せます。
これだけでも自転車が走りやすい空間をつくることが可能です。
わざわざ歩道を長期間工事せずとも、夜の間に路側帯にペンキを塗るだけで完成するので、工事に多額の税金を使う必要もありません。
税金は、電動アシスト自転車の購入補助金もしくは、後述する地下駐輪場建設費に充てていただければと思います。
第二段階としては、路側帯を広げることです。
最終的には歩道の自転車の大半が、車道を走ることが望ましいと考えますので、歩道を現行の広さより狭くしても問題なくなります。
その分、車道の路側帯を広げて、自転車を走りやすくすることが可能です。
自転車の走行しやすい空間を確保することが、自転車を安全に利用するために最も重要な取り組みですし、歩道を歩行者にとって安全な空間にすることを可能とします。
3 放置自転車台数減に向けた取組の強化
○ クリーンキャンペーンの効果的推進
⇒ 中間案に対する都民意見等を踏まえ、 「第10次東京都交通安全
計画」の策定に合わせて、改定計画を策定する。
→圧倒的な駐輪場不足が原因に他なりません。
駅の近くに大規模な駐輪場を用意するとなると、地下につくる以外に道はないかと思います。
エレベーターで出入りようなタイプの地下駐輪場では、入出場に時間がかかり利便性が低いです。
坂道で地下に入出場できるようなタイプの地下駐輪場を都内各地にたくさんつくる必要があると考えます。
結論
自転車の安全利用を妨げる一番の要因は、自転車にとって車道が走りにくいことです。
ここがボトルネックであり、いくらマナーを改善したところで、本質的な問題解決にはなりえません。
マナーの啓蒙活動は個人レベルでも出来るかもしれません。
法整備してもらった方が、速く効果が出ると思いますが、個人レベルでも影響力の強い人がメッセージを出して、マナーの啓蒙活動を行っています。
しかし、交通インフラを整えることは個人には絶対に不可能であり、国の力が必要です。
だからこそ、最も伝えたいことは「自転車が走りやすい道路をつくること」です。
端っこを色で塗るだけで効果絶大です。
お金は歩道の上に自転車専用道路をつくることよりも遥かに安価で実施可能です。
世界有数の大都市である東京のネガティブな側面である、交通事故の多さ・通勤ラッシュのひどさ・排気ガスによる大気汚染のすべてを解決しうるポテンシャルを秘めているのが自転車です。
東京オリンピックに向けて、自転車が走りやすい交通インフラの整備を最優先で取り組むことで、東京という都市の魅力がさらに高まるとわたしは確信しています。
東京都の英断に期待して、本提言を終わらせていただきます。
なお本提言にあたって、私自身は疋田智さん、高千穂遥さんの影響を多く受けていると思います。
以下の書籍に書いてあることを提言として申し上げている部分もあると思いますので、参考資料として紹介しておきます。