あきさねゆうの荻窪サイクルヒット

アラサー男子がブロンプトン・ロードバイク・プロ野球・メジャーリーグ・ラーメンネタ中心にお送りします。

最近ボロカスに叩かれがちな巨人が、それでもリーグ2位なのはなぜか?

広告

広島カープがリーグ優勝を決め、横浜DeNAベイスターズが初のCS進出を決めました。

読売ジャイアンツは2年連続で優勝を逃した上に、最近は『論外』『覇気がない』『プロらしからぬプレー』などと印象面でも批判されることが多くなっています。

でも2位なんですよね〜。

シーズン序盤は打てなかったり、菅野の登板時には援護が無かったり、澤村が打たれたり、マイコラスがキレたりなど、確かにイメージは良くありません。

そもそもシーズン始まる前から、野球とb…ゲフンゲフン。これは止めておきます。

普通に考えたら、プラス要素よりマイナス要素がいくらでも出てきそうな中で、リーグ2位という結果を残していることが不思議に思いました。

ということで、巨人はなぜリーグ2位の成績を残せているのか、データを見ながら考察してみます。

※データ等は全て、2016.9.20時点のものです。この後、3位になったらご愛嬌ということで笑

チーム成績

  • 全体

67勝64敗3分でリーグ2位

Home:36勝29敗1分
Visitor:31勝35敗2分
→ビジター負け越し数4はリーグ2位の少なさ

先制時:51勝27敗2分(先制回数はリーグ最多)
許先制時:16勝37敗(勝利数はリーグ最少)

逆転勝ち:21勝(リーグ最少)
逆転負け:34敗(リーグ最多)

6回ビハインド時:4勝48敗(リーグ最低勝率)

  • 攻撃面

得点数:489(リーグ5位)
チーム打率:.249(リーグ3位)
チーム本塁打:121(リーグ3位)
盗塁数:60(リーグ4位)
代打率:.154(リーグ6位)

  • 守備面

失点数:504(リーグ2位)
チーム防御率:3.41(リーグ2位)
先発防御率:3.35(リーグ2位)
救援防御率:3.53(リーグ4位)


どちらかと言えば投手力で勝っているチームということは分かります。

先発防御率が、リーグトップのカープに肉薄する数字を出しているのは、菅野一人の功績が非常に大きいです。

最も気になったことは、

・先制回数が多い
・逆転負けが多い
・終盤の逆転勝ちはほとんど無い

ことです。

長年、巨人のリリーフを支えたきた山口鉄也が今シーズンは防御率5点台と不調のため、リリーフ事情は非常に苦しかったです。昨シーズンの救援防御率2.71からだいぶ悪化しました。

更に代打率が.154と、代打の切り札的存在が全くいないため、終盤に代打攻勢を仕掛けてもほとんど実りません。昨シーズン代打率.395の高橋由伸の引退、代打率.300の堂上剛裕の不調が、大いに影響しています。今シーズンは、大田泰示の代打率.200がチーム最高という悲惨な状況です。

逆転負けがリーグ最多であるのは、リリーフの不調と代打の切り札不在が大きく影響していることでしょう。


イニング別得点数では、

・1〜3回:174点(36%)
・4〜6回:178点(36%)
・7〜9回:126点(26%)
・10〜12回:11点(2%)

と、相手先発投手が登板しているであろう1〜6回に集中的に得点を重ねています。

このことから相手先発投手をしっかり研究し、攻略法を徹底して、序盤に攻めることがチームの方針であることがわかります。

巨人の勝ちパターンは、とにかく序盤で点を多く取ってリードを守ることです。

巨人のスコアラーが収集したデータを、由伸監督をはじめ現場で、うまく活用出来ているのではないかと思います。

投手のゴロアウト率が高い

GO/AOという、ゴロアウト数をフライアウト数で割った指標があります。この数値が高ければ高いほど、ゴロを打たせる傾向が高いです。

逆にGO/AOが低いと、ホームランや長打を打たれやすい傾向にあります。

よって、GO/AOが高い投手を揃えることで、被安打数あたりの失点は下がる傾向にあります。

今年のセ・リーグの平均は1.15でしたが、巨人は1.28でした。トップの広島は1.30です。

ちなみに、2013年は1.27、2014年は1.27、2015年は1.18となっているので、近年の巨人はゴロを打たせる方針でチームをつくっていると言えましょう。

先発投手単位で見てみますと、主力投手の今シーズンのGO/AOは

菅野智之:1.58(170.1)
田口麗斗:1.19(149.0)
高木勇人:0.99(115.0)
内海哲也:1.41(95.0)
大竹寛:1.46(86.0)
今村信貴:2.25(77.1)
マイコラス:1.55(75.1)

※()内はイニング数

という風に、軒並み1.40以上で、高いゴロ率を記録しています。

しかし、ゴロ率が高ければいいという指標ではありません。

ゴロを打たせた上で、しっかりアウトにするためには、ゴロを捌く内野守備が非常に重要です!

センターラインの守備力が高い

守備力を表す指標として、UZR(Ultimate Zone Rating)があります。

これは『リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか』を示す指標で、高ければ高いほど素晴らしいです。

巨人の今シーズンの各ポジション毎のUZRは以下の通りです。

投手:-1.7(5)
捕手:2.9(2)
一塁:-21.6(6)
二塁:5.8(2)
三塁:-9.1(5)
遊撃:6.4(2)
左翼:-8.5(5)
中堅:10.1(2)
右翼:-2.9(6)

全体:-18.8(5)

※()内はリーグ順位

あまり良い数値ではありませんが、捕手・二塁・遊撃・中堅のセンターラインに限っては、良い数値を残しています。

ショートは何と言っても坂本勇人の守備が抜群に良くなりました。坂本勇人単体でのUZRは11.3と、セ・リーグのショートではNo.1の数字です。

セカンドは、ルイス・クルーズ、山本泰寛、片岡治大、脇谷亮太の順にセカンドとしてのスタメン出場試合数が多いです。

特に片岡治大は2014年シーズンにUZR10.2を記録する、二塁の名手です。今シーズンは怪我で欠場が多く、ルイス・クルーズの補強は非常に的確でした。

セカンドとショートのバックアップを行う、寺内崇幸も重要な役割を担っていたと言えましょう。


しかしながら、三塁・一塁のUZRが悪いため、せっかく打たせたゴロをアウトにし損なう場面も多いと言えましょう。

三塁の村田修一、一塁の阿部慎之助は、それぞれ攻撃面での貢献が大きいため、守備力だけで起用法を考えることは難しいです。


捕手のUZRは、阿部慎之助が正捕手だった2014年シーズンは2.8で、小林誠司が正捕手を務める今シーズンは2.9と遜色ない数値を記録しています。

そして、センターは橋本到・立岡宗一郎・重信慎之介が順にスタメン出場数が多いです。センターの守備力が高いことが、チームに好影響を与えていることは明白です。


かつては、鉄壁の守備を誇った巨人も、故障や衰えで鉄壁とは言えない布陣になりました。その中で、最低限センターラインの守備力を維持できる戦力を整えたことは、もう少し称賛してもいいと思います。

個人成績を見てみる

次は個人成績です。

攻撃力では、坂本勇人の圧倒的なパフォーマンス向上が非常に大きいです。特に外角の球を、打てるようになったことが非常に大きいです。

更にベテランの村田修一、阿部慎之助が復調して、打撃面で大きく貢献しています。

ギャレットの長打力も昨年には無かった武器です。チーム本塁打数が昨年の98本から、今年は現時点で121本と増えている点は大きいです。

昨年、ブレイクした立岡宗一郎が今シーズンは怪我や不調で離脱していることはマイナスです。

このように打撃面では、総じて昨シーズンからの上積みが見られたと言えましょう。


投手力では、菅野智之・田口麗斗の2枚看板に加え、内海哲也・大竹寛が復調気味な点がプラスです。

しかし、それらを上回るマイナスが、高木勇人・マイコラス・ポレダの不調です。

昨シーズンはこの3人で30勝しましたが、今シーズンはここまで8勝です。

リリーフ投手では、マシソンの成績向上が非常に大きいです。

特に球威・制球力共に向上して、K/BBは昨年の2.62から4.43に大きく改善されています。

田原誠次の成長も非常に大きいです。シーズン前半は打ち込まれるシーンも目立ちましたが、最近では不調の山口鉄也に代わってセットアッパーを務める機会も増え、チーム3位の14ホールドを記録しています。

何かと批判の多い澤村拓一ですが、リーグ最多の37Sを記録していて、チームへの貢献度は高いです。昨シーズンに比べて、GO/AOが1.33から0.90となっていて、ストレートの球威が落ちたためなのか、フライが急増しています。HR/9も0.53から0.77へと悪化している点が、印象を悪くしている原因と言えそうです。

とはいえ、一人のストッパーとして見れば、チームへの貢献度は高く、先行逃げ切りのチームには欠かせない存在だと言えましょう。澤村が昨年と同レベルの成績を残したところで、1位にはなれなかったでしょうし、澤村がいなかったら2位も無いでしょう。Bクラス転落すらあり得ます。

わたしは澤村は、チームの2位に大きく貢献した選手の一人で、その重要性は極めて高い選手であると思っています。

数字に現れない部分への評価

成績やセイバーの指標などの数字には見えない部分について、考察してみます。

  • 由伸監督が選手を我慢強く選手を起用すること

ギャレットは、4番・ファーストで開幕スタメンに名を連ねると、5/18の試合まで基本的に4番・ファーストで起用しました。

5/20からの3連戦で6番・ファーストで起用するも、5/23にアンダーソンと入れ替わりで二軍に落とされます。

二軍では、恐らくレフトの守備練習をしていたはずです。6/10に一軍昇格して7番・レフトでスタメン起用が続くようになります。

これが当たって、6・7月は打率.306・8HR・長打率6割と強打者へと変貌します。

5月の半ばまで、辛抱強く起用したことが、二軍での調整を経て、日本の野球にフィットするに至ったと思います。

小林誠司も貧打貧打、散々ディスられていますが、守備面でのチームへの影響はとても大きいです。

WAR(Wins Above Replacement)という『そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたか』を示す指標では、+1.0を記録しています。

打率2割ちょうどくらいの選手が、プラスの数値を記録しているということは、守備で立派に貢献していることは明らかです。

田原誠次もシーズン序盤では打ち込まれることが多かったですが、一度も抹消されることなく、今ではセットアッパーを担う選手にまで成長しました。

試合後のコメントではよく『こっちは一番良いと思って送り出してるんでね』と涼しい顔で、報道陣に答える由伸監督の我慢強い選手起用は、数字に見えない部分で選手のパフォーマンス向上に寄与していると思います。

  • カンフル剤の有効活用がうまい

2015年育成ドラフト8巡目指名、ドラフト全体で最も指名順位が遅かった長谷川潤が、5/6に先発登板しました。

3年目の平良拳太郎を4/7に先発させたり、今村信貴、公文克彦、土田瑞起、江柄子裕樹など実績に乏しい選手をシーズン序盤は積極的に起用するシーンが目立ちました。

この起用で、契約最終年である内海哲也と大竹寛は火が付いたと思います。マジでやらないとヤバい!と。

それだけでなく他の若手選手にも好影響を及ぼしたことは間違いないでしょう。結果として、巨人二軍はイースタン・リーグ2連覇を果たしました。

戦力の底上げに繋がる起用法だったと思います。

まとめ

細かく考察していくとキリが無くなるので、このへんでまとめたいと思います。

巨人がリーグ2位になった要因は、

・相手先発投手を研究し、先制して逃げ切りを狙う
・二遊間の高い守備力を生かして、ゴロを打たせてアウトを取る
・坂本、村田、阿部の成績向上
・ギャレット、クルーズの獲得
・田原の成長、マシソンの成績向上
・由伸監督の我慢強い起用、カンフル剤の有効活用

がリーグ2位に押し上げた要因となっていると思います。

逆に昨シーズンに比べてマイナスとなっている要因は

・山口、高木、マイコラス、ポレダの不調
・澤村の球威低下(それでも澤村の存在は絶大)
・立岡の不調

と言ったところでしょうか。

山口、高木、マイコラス、ポレダの不調は本当に大きく、巨大な損失であると言えましょう。

その巨大な損失をわずかなプラスの積み重ねで埋めて、それでも埋めきれずにリーグ2位という結果を残した、と思います。

広島が強すぎたけど、昨年の主戦投手の不調をどうにかやり繰りして戦ってきたシーズンだということです。

そして、本分析は長いシーズンを戦う上での、ざっくりとした分析です。

CSや日本シリーズなどの短期決戦となると、また違った観点で分析する必要がありますね〜。

また、巨人は来年以降に山ほど課題を残していますが、それについては、また後日記事を書きたいと思います。