あきさねゆうの荻窪サイクルヒット

アラサー男子がブロンプトン・ロードバイク・プロ野球・メジャーリーグ・ラーメンネタ中心にお送りします。

もし桃太郎をレオナルド・ディカプリオ主演でハリウッドリメイクしたら

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『モモタロウ:生まれし者』

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プロローグ

そう、あれは遠い昔の話だった。

ボクの父さんは大麻の密売に失敗して行方不明に、母さんはマフィアに殺されてしまった。

ボクには頼れる人がいない。

ましてやボクが、いまどこにいるのか、どこに向かっているのかさえわからない。

まるで夢の中にでもいるような気分だ。

いや、もしかしたら夢の中なのかもしれないな…。

ボクは、どこにいるのだろうか?

オープニング曲

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生誕の地にて

「さて、今日も川で洗濯をしますか!」

空には一点の曇りもない澄み切った青が広がり、川面にはキラキラと太陽の光が反射している。

「おや?なんだあれは?」

質素な服に身をつつんでいる、おばあさんは、上流から流れてくる大きな桃に目を疑った。

「こりゃ、たまげた!おじいさんに見せてあげなければ!」

おばあさんは、目を輝かせながら、家に大きな桃を持ち帰り、おじいさんの帰りを待つことにした。


山へダイヤモンド採掘に行っていたおじいさんが、家に帰ってきた。

「おーい、帰ってきたぞ」

「おじいさん、お帰りなさいませ」

「ばあさん、いったいそれはどうしたんだい!」

おじいさんは、おばあさんの抱えている大きな桃を見ながら言いました。

「ばあさんや、この村のしきたりでは、禁断の果実が災いをもたらすと言われておるぞ」

「おじいさんたら、考えすぎですよ。これはただの大きな桃ですわ。早速、切ってみましょうね」

おばあさんが、かつて傭兵だった頃に戦場で使っていたアーミーナイフを取り出し、桃を切ろうとしたその刹那、おびただしい光と共に、中から赤ん坊が出てきた。

「なんじゃ!何も見えんぞ」

「まぁ大変!中から赤ん坊が!」

おばあさんは咄嗟の判断で目をふせたが、おじいさんはあまりの眩しさに視界を失った。

『おぎゃあ!おぎゃあ!』

「あら、よしよし、いい子だねえ。あなたは桃から生まれた『桃太郎』と名付けますわ」

「ばあさん、一体これは!?」

こうして、おじいさんとおばあさんと桃太郎の奇妙な共同生活が始まった。

川岸にて

「この手紙は、何だろう?」

イヌは郵便受けに入っていた奇妙な封筒を見て、いぶかしげに思った。

「招待状?あの川の向こうの家か?」

川の向こう岸に立っているとてつもなく大きな館からのパーティの招待状だった。

「今度の日曜日か、やることないし行ってみるかな」


日曜日になると、大きな館では音楽が鳴り響く喧噪の中で、酒を交わしながら人々の談笑する大勢の人の姿が見られた。

「おっと、すまない」

ボーイにぶつかりそうになったイヌは、慌てて身を翻した。

「これは失礼しました。よければ飲み物のおかわりはいかがです?」

「ありがとう。シャンパンを一杯もらえるか」

グラスを受け取りながら、イヌはボーイにたずねる。

「このパーティはすごい騒ぎだ。ぼくの家は、むこうの川岸にあるんだ。ずっと前から、この館にはどんな人が住んでいるのか気になっていたんだ。でもまだ、この館の主人にお会い出来ていないんだ」

「そうですか、これは失礼いたしました。改めてご挨拶を」

ボーイは左手のトレイに乗ったシャンパンを一つ右手に取り、イヌの方を向いてこう言った」

「ようこそ、我が館へ」

これが、ぼくと桃太郎とのフシギな出会いだった。

このときは、まだ共に鬼退治をすることになるとは思いもよらなかった。

ボストン市警にて

「捜査状が出たのか」

「はい、警部。これでヤツらの根城を暴けます」

キジは、手元の紙に視線を落とした。

「あまり、気が進まないな」

「警部、これはチャンスなんですよ!この5年間、ずっと機会をうかがってきたのは警部じゃないですか!」

「そうだが、しかし…」

捜査状には「桃の館 住所:レボリューショナリーロード」と書いてある。

「桃の館」の主である桃太郎とは、かつて警官学校で同じ釜の飯を食った仲だった。

わたしが警官学校を卒業したときに、彼は警官の道には進まず航空学校に入り直したと聞いている。
警官学校の卒業以来、桃太郎とは会っていなかった。

最近の捜査で、「桃の館」の主人が桃太郎だと知ってから、この捜査にあまり乗り気でないが、そうも言っていられない。
なぜなら、これは仕事だからだ。

「おい、お前」

「何です、警部?」

「タバコを一本くれないか」

キジは重い腰を上げ、「桃の館」へと足を運ぶことにした。

ニューヨークのとあるビルの一室にて

『製作費1000億円!史上最大の大作「天国の悪魔」アカデミー作品賞ならず!』

街中に号外が飛び交っている。

「あれだけの製作費、広告費をかけたのに」

ブラウン管越しに映し出される映像の光が、暗がりの中で衣類一つまとわぬ姿の男の髭面を照らす。

「賞の一つも取れないなんて、まったく笑ってしまう」

その男が、かつてはウォールストリートを席巻した時代の寵児だったとは、いったい誰が信じようか。

「こんなはずじゃなかった」

男の名はサル。

3年前に証券取引法違反、マネーロンダリングの罪に問われて、投獄されていた。

「あのクソ野郎め…」

あれは、何年前だったか。
寒空の広がる秋の話だったことは覚えている。

市場は空前のITバブルに燃えるなか、桃太郎とは行きつけのバーで出会った。

その時のことを、サルは思い出していた…。

………

「このペンをボクに売ってみろ?」

バーの喧騒の中、目の前にいる男、桃太郎がサルに問いかける。

「このペンをか?」

「そうだ」

「このペンは、ステンレスのボディで…」

「違う、そうじゃないな」

桃太郎はサルからボールペンを取ると、

「あぁ、君の名前は何だっけ、この紙に書いてくれないか?」

「書くものがない」

「ここにあるが、いくらで買う?」

「クソ!そのボールペンを一本よこせ!」

「そういうことだ。ニーズがないなら作り出せばいいんだ。分かるか?客が欲しいものはつくれるってことだ」

「わかった、わかった。で、いくら出せばいい?」

………

暗がりの部屋で一人、サルは復讐を誓った、そのときブラウン管から新たな緊急速報が流れた。

運命を変えるニュースが全米を駆け回った瞬間である。

桃の館にて

「冗談じゃない!馬鹿にしやがって!」

桃太郎の怒号が部屋中に響き渡る。

「クソッ、一体なんでこんな…。ボクが一番なんだ…。一番でなければおかしい」

『レッド・オーズ、鬼ヶ島にて蜂起!』
『モモタロウ・アメリカンズとの抗争、レッド・オーズ優勢か?!』
という見出しが躍る新聞記事を床に投げ捨てた。

「ばあさん!」

桃太郎はおばあさんを呼んだ。

「あれを使う」

「桃太郎、あれは使ってはならないわ」

桃太郎はテーブルをひっくり返して、おばあさんを怒鳴りつけた。

「今はそんなことを言っている場合か!一刻を争うときなんだぞ!」

「わかったわ、桃太郎」

おばあさんは、そう言い残すと桃太郎に一つの鍵を預けた。

「地下に行きなさい。あなたの求めるものは、そこにあるわ」

「ありがとう、おばあさん。ボクが一番だって証明してみせるからね」

桃太郎は地下室の鍵をあけ、中に入った。
そこには大量の偽造小切手があった。

「これだ、これならアレを調達できる…。アレさえあれば、ボクは…」

ニューヨークの港にて

強い風が吹いている。
いつもなら波止場に止まっている鳥たちも、今日はほとんど見当たらない。

「イヌか。よく来たな」

「あのシャンパンのお返しがまだだったからね」

桃太郎の呼びかけにイヌは応えたのであった。

「久しぶりだな、桃太郎」

「おお、キジか。一体何年振りか」

キジは密造酒販売の容疑で桃太郎を捜査していたが、FBIの陰謀によりキジの部下に裏切られ、職を失っていた。

裏でFBIを操っていたのが、何を隠そう赤鬼だったからだ。

「あと一人。そろそろかな」

桃太郎が首にかけている懐中時計を見つめながら言った。

「待たせたな」

サルがやってきた。

「相変わらずのクソ面、ぶん殴ってやりたいぜ」

「口の悪さも相変わらずだな」

「赤鬼をぶっ飛ばしてから、お前を殴る」

サルがウォールストリートから失脚した要因は、赤鬼のダミー会社であるオーガファンドと取引したことだったからだ。

「よし、行こうか」

『おう!』

かくして、桃太郎とその一行は、豪華客船「タイタニック号」で閉ざされた島、通称シャッターアイランドと呼ばれている鬼ヶ島へと向かった。

鬼ヶ島にて

「一番強いのはだれか?」

『赤鬼!赤鬼!赤鬼!』

「この世を支配するのにふさわしいのはだれか?」

『赤鬼!赤鬼!赤鬼!』

「諸君、これはただの闘いではない。われわれの命運だけでなく、世界を変える一戦となる!」

『うおおおおおおお!』

桃太郎襲来の報を聞き、赤鬼は手勢を砦に集めていた。

「よし!行くぞ、てめえら!」

そのときだった。耳をつんざく破裂音に猛烈な地響きが起きた。
その場に立っていられるものは一人としていなかった。

「な、なんだ!どうなっている!」

『FBIの爆撃です!』

「なぜ、FBIがここを!買収したのではなかったのか!」

『わ、わかりません』

赤鬼は錯綜していた。
あるはずのないFBIからの攻撃に。

「仕方がない、おまえら行くぞ!」

『うおおおおおおお!』

砦の外はすでに大乱戦状態だった。

「もはや、これまでか。出直す必要があるな」

「待て、赤鬼!」

「その声は…!」

大西洋にて

桃太郎一行率いる「タイタニック号」は順調に航海を続けていた。

『船長!前方に氷山があります!』

「大丈夫だ。タイタニックは不沈船だ。そのまま進め」

『ですが、船長!あの氷山は巨大です!船長、取り舵を!』

そのときだった。ドーンという音とともに、船全体に衝撃が襲った。

「ぶつかったか。救難信号は?」

『今出してます!』

『ダメです!沈みます!』

救難信号をキャッチしたFBIの艦隊が、タイタニック号の救助に向かっていた。

九死に一生を得た桃太郎一行はFBIの艦隊とともに、鬼ヶ島へと向かった。

鬼ヶ島にて

「赤鬼!」

「その声は…、桃太郎か」

「命運尽きたな。お前はここまでだ」

桃太郎はその手に握っているグロックの銃口を赤鬼に向けた。

「それはどうかな」

赤鬼は意味深な笑みを浮かべた。

「ふざけるな!この状況でどうにかなるとでも思っているのか!おまえはもう終わりなんだよ!」

桃太郎は赤鬼に向けて拳銃を握り直す。

「クックック、さあ撃ってみな」

「なめるんじゃねえ!」

桃太郎は引き金を引いた。
甲高い銃声とともに、かすかな衝撃を身に覚えた。

そして地面に倒れたのは、赤鬼ではなく桃太郎だった。

(おかしい。世界が横になっている。)

(あれ?赤鬼が倒れていない。倒れているのは自分…か…。いったい…だれが…やったんだ……)

声にならない声を発しながら、桃太郎は絶命した。

「ご苦労であった、イヌさん」

「難儀でしたよ。この時のために5年もの間、へんぴな川岸に住まされたんですから」

イヌがやったのだ。

「キジとサルはどうした?」

「殺りましたよ、仰せのままにね」

「そうか、ではこんなところには長居は無用だ。お前もついて来い」

『ドンッ!』

赤鬼が振り返ろうとしたそのとき、赤鬼の腹部を銃弾が貫いた。

「ぐふっ、やはり…そういうことだったのか…。イヌ…おまえは……」

全てをしゃべり終わる前に、イヌはもう一発赤鬼に向けて銃弾を放った。

「よし、引き上げるとするか」

イヌは、砦の扉を開けようとした、まさにその瞬間だった。

『バキューン!』

イヌは自分の身に降りかかった出来事を理解するのに一瞬時間がかかった。

「なぜ…なぜ、桃太郎…おまえがそこに……なるほど、桃がドンブラコとは…そういうことだったのか……」

すべてを理解した時にはすでに、イヌの命はこの世になかった。

桃太郎はイヌを見下ろしながら言った。

「半分あってるよ。まるで長い夢を見ていたかのような気分だぜ…」

桃太郎はすべてを悟った表情で、その場を立ち去った。

エピローグ

あれから3年が経った。
桃太郎はどこへ行ったのか。

私はずっと探しているが、鬼ヶ島の決闘以来、桃太郎の姿を見たものはいない。

レッド・オーズは赤鬼の死亡を持って、組織は崩壊した。

桃太郎率いるモモタロウ・アメリカンズも、リーダー不在の中、金太郎や浦島がよくやってくれている。

私は時々思うんだ。

これは現実なんだろうか?って。

醒めない夢を見ているのではないか?って。

かつてキジの部下だった、かぐやは今ではモモタロウ・アメリカンズの幹部として世界を飛び回る多忙な日々を送っている。

夢が醒めたら、あなたに会えるのだろうか。
夢を見たら、あなたに会えるのかだろうか。

あなたは、どこにいるの?

エンディング曲

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キャスト

桃太郎:レオナルド・ディカプリオ

おばあさん:ケイト・ウィンスレット
おじいさん:トム・ハンクス

イヌ:トビー・マグワイア
キジ:マット・デイモン
サル:渡辺謙

赤鬼:ジャック・ニコルソン

かぐや:キャメロン・ディアス

  • 友情出演

金太郎:ジャイモン・フンスー
浦島:トム・ハーディ

制作

監督・脚本:クリストファー・ノーラン
制作:クリストファー・ノーラン、マーティン・スコセッシ、バズ・ラーマン