雨の降りしきる超級山岳ジュプラーヌ峠からのダウンヒルで、決死のアタックを決めたヨン・イサギーレ(モビスター)がステージ優勝しました。
モビスターにとっても、今大会初勝利となりました。
また、クリス・フルーム(チームスカイ)は、メイン集団でアシスト4人に守られながらフィニッシュ。事実上、ツール・ド・フランス連覇が決定的となりました。
34名の逃げ集団が形成される
主な逃げに乗っている選手は、
総合上位チームでは、
セルジオ・エナオモントーヤ(チームスカイ)
イマノル・エルヴィーティ(モビスター)
ヨン・イサギーレ(モビスター)
ネルソン・オリヴェイラ(モビスター)
ベン・ガスタウアー(AG2R)
アレクシス・グジャール(AG2R)
シリル・ゴティエ(AG2R)
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
ヤコブ・フグルサング(アスタナ)
ヤスパー・ストゥイフェン(トレック・セガフレード)
フランク・シュレク(トレック・セガフレード)
あたりのアシスト選手を送り込んでいます。
ステージ優勝狙いと思われるところでは、
ペーター・サガン(ティンコフ)
ロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)
ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)
マイケル・マシューズ(オリカ・バイクエクスチェンジ)
ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)
ウィルコ・ケルデルマン(ロットNLユンボ)
トニー・ギャロパン(ロット・ソウダル)
トーマス・デヘント(ロット・ソウダル)
イルヌール・ザッカリン(カチューシャ)
ピエール・ロラン(キャノンデール)
シルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)
ヤルリンソン・パンタノ(IAMサイクリング)
あたりが逃げに乗っています。
有力選手、強力選手らによって形成された逃げ集団であるため、メイン集団はチームスカイがコントロールして、タイム差3分程度でコントロールしています。
最初の2級山岳はデヘントが先頭通過。
続く中間スプリントはマシューズが先頭。
1級山岳コロンビエ峠でもデヘントが先頭で通過しました。
山岳賞トップはラファル・マイカ(ティンコフ)で、ポイント的には山岳賞が確定しています。デヘントは意地と万が一に備えてのポイント獲得を目指したものと思われます。
逃げ集団は徐々に分裂して、残り80km地点では、
サガン、ニーバリ、ヨン・イサギーレ、アラフィリップ、クロイツィゲル、ルイコスタ、パンタノ、グジャール
の8名が逃げる展開となりました。メイン集団とは6分差をつけています。
クロイツィゲルは、総合で9分45秒遅れの総合12位であるため、このタイム差でゴールすると総合2位にジャンプアップすることになります。
大雨が降ったり止んだりの1級山岳ラマーズ峠
デヘント、ピエール・ロラン、ケルデルマン、シャヴァネル、ザッカリン、エナオモントーヤら、逃げの追走集団が、ニーバリらの先頭集団に追いつきます。
すると、デヘントがそのまま先行し、一人で逃げていきます。
これを追って、ルイ・コスタとピエール・ロランが追いかけ、残った追走集団はニーバリ、クロイツィゲル、アラフィリップ、ヨン・イサギーレ、ケルデルマン、ザッカリン、エナオモントーヤ、パンタノの8名となっています。
メイン集団では、総合10位のバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)が苦しそうな状況に陥っています。
頂上は、デヘントが先頭通過しまして、今日は25pts加算しました。これで山岳賞2位は確定しました。
下り坂では、ダウンヒルを得意とするパンタノとアラフィリップが抜けだして、デヘントをかわして先行します。
ピエール・ロランは昨日の落車の影響もあるのか、安全第一と言った様子で逃げ集団から遅れをとっていきます。
そのまま、パンタノ、アラフィリップグループは追走集団に1分40秒差、メイン集団とは6分20秒差のアドバンテージを持って、超級山岳ジュプラーヌ峠に登りに入ります。
大雨の超級山岳ジュプラーヌ峠
ファビオ・アル(アスタナ)が登りで失速してしまいます。どうやらハンガーノックのようです。
慌てて、アシスト選手が下がってアルにエナジーバーを渡しますが、時すでに遅しと言った状況です。
ということで、逃げ追走集団からは、アルをアシストする必要のなくなったニーバリがアタックします。
さらに、中盤でメイン集団から遅れていたモレマが、いつの間にか集団復帰していて、メイン集団からアタックしました。前日も落車があったとはいえ、調子は良かったようで、怒りのアタックと言えましょう。
ですが、数キロはメイン集団から先行したものの、結局吸収され、さらにはメイン集団からも遅れてしまいました。
先頭の2人を追いかけるニーバリが快調に登っていき、あっという間に先頭の2人を視界に捉えます。
そのタイミングで、パンタノがアタックします!アラフィリップは十分に対応できています。
山頂まで残り3.5km地点でニーバリが2人に追いつくと、そのまま間髪入れずにアタックします!
一発目のアタックは対応出来ましたが、ニーバリがシッティングのまま更に加速すると、2人はついていけなくなりました。
ニーバリはパンタノ・アラフィリップに対して、20秒以上のリードを築きます。
すると、後方から上がってきたヨン・イサギーレが2人に追いつき、そのまま加速してニーバリを目指します。
パンタノはヨン・イサギーレについていきましたが、アラフィリップはキツそうです。
もうすぐ頂上というところで、パンタノとヨン・イサギーレがニーバリに追いつきました!
後方では、メイン集団から飛び出したホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)を、前から降りてきたザッカリンがアシストしながら、メイン集団にリードを築きつつ、先行するクロイツィゲルを追いかけます。
このままのタイム差でゴールすると、ホアキンはクロイツィゲルに総合タイムで逆転されてしまうからです。
いよいよ、最終盤!ジュプラーヌ峠のダウンヒル
ヨン・イサギーレは、『ツール・ド・スイス』の個人TTで、非常にテクニカルなダウンヒルで参加選手最速の時速110キロを叩き出すほどの下りの名手です。
大雨のダウンヒルですが、圧倒的なスピードで、パンタノとニーバリを一気に引き離します。
パンタノはコースアウト寸前になるほど、攻めた走りを見せますが、ヨン・イサギーレには届きません。
パンタノから20秒近いリードを保ったまま、ゴール地点にフィニッシュしました。
ヨン・イサギーレ自身、ツール初勝利。そして、モビスターにとってもありがたい一勝となりました。
パンタノは19秒遅れでゴールしました。
山も登れて、ダウンヒルも速いという、最高のアピールが出来た上に、スーパー敢闘賞を獲得しました。
42秒遅れでニーバリ、49秒遅れでアラフィリップがフィニッシュ。アラフィリップは山頂では40秒以上遅れていたはずなので、超級山岳での遅れがなければ、ダウンヒルではヨン・イサギーレに匹敵する走りが出来たはずで、惜しい結果でした。
クリス・フルーム(チームスカイ)は、4人ものアシストに囲まれながらメイン集団でゴール。
悟ったような笑みが、今ツールを物語っていると思います。
ナイロ・キンタナ(モビスター)はこの表情です。
総合3位という成績は立派なことです。ですが、キンタナには打倒フルームという大きな大きな責務を担わされていたため、やはりプレッシャーを感じる部分もあったのではないかと思います。
今年で引退するホアキン・ロドリゲスは、最後にアグレッシブな走りを見せ、総合7位までジャンプアップしました。
有終の美と言える結果でしょう。とはいえ、ブエルタにも出場するのではないかと思いますので、まだまだホアキンの走りを楽しみにしています。
アルは、最後の最後でやらかしてしまいました…。トップから17分以上遅れてのゴールです。
総合トップ10位からも落ちてしまい、アスタナとしてもステージ優勝ゼロと、全く良いところがない大会でした。
とはいえ、ツールまでに昨年のブエルタ、今年のジロと2連勝していたわけですから、チーム力に疑いはありません。今大会が噛み合わなかっただけと思っておきます。
サガンも難なくフィニッシュ。
アルベルト・コンタドール離脱という事件がありましたが、サガンとマイカがそれぞれジャージを獲得して、最後にクロイツィゲルも総合10位に滑り込んで、結果的にティンコフとしては上出来な大会だったと思います。
各種リザルト
総合順位
1位、クリス・フルーム(チームスカイ)
2位、ロメン・バルデ(AG2R) +04'05"
3位、ナイロ・キンタナ(モビスター) +04'21"
4位、アダム・イェーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ) +04'42"
5位、リッチー・ポート(BMCレーシング) +05'17"
6位、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +06'16"
7位、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ) +06'58"
8位、ルイス・マインティーズ(ランプレ・メリダ) +06'58"
9位、ダン・マーティン(エティックス・クイックステップ) +07'04"
10位、ロマン・クロイツィゲル(ティンコフ) +07'11"
ポイント賞(マイヨ・ヴェール)
1位、ペーター・サガン(ティンコフ) 440pts
2位、マルセル・キッテル(エティックス・クイックステップ) 228pts
3位、マイケル・マシューズ(オリカ・バイクエクスチェンジ) 183pts
山岳賞(マイヨ・アポワルージュ)
1位、ラファル・マイカ(ティンコフ) 209pts
2位、トーマス・デヘント(ロット・ソウダル) 130pts
3位、ヤルリンソン・パンタノ(IAMサイクリング) 121pts
ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)
1位、アダム・イェーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)
2位、ルイス・マインティーズ(ランプレ・メリダ) +02'16"
3位、エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・アルゴン18) +42'58"
チーム総合
1位、モビスター
2位、チームスカイ +08'14"
3位、BMCレーシング +48'11"
ランタンルージュ*1
サム・ベネット(ボーラ・アルゴン18) +05h17'14''
第21ステージは、パリ・シャンゼリゼでのスプリント勝負!
テロへの警戒をしながら、無事予定通り開催されることとなったシャンゼリゼ周回コースです。
凱旋門に至るゴールを一番にフィニッシュする名誉を掴まんと、スプリンターたちによる高速バトルが展開されるはずです!
ステージ優勝予想は、ブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)に期待したいです!
今日のステージでも、序盤に逃げに乗るなど、足は回っているように見えました。
明日第21ステージは、スカパー・J Sportsで22:45から中継開始予定です。実況はサッシャさん、解説は宮澤崇史さん、ゲストはフローラン・ダバディさんです。
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