メカトラ・落車が相次いだサバイバルレースを制したのは、フレフ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)!
日本の新城幸也選手は27位完走でした。
レーススタート直後からアタック合戦が繰り広げられる
リオのリゾート地である、コパカバーナを出発し、同じところに戻ってくる全237.5kmのコースです。
ニュートラル走行が終わると、各国の選手たちによるアタック合戦が始まります。
前回のロンドン五輪では、あまりにも多くの選手を逃がした結果、逃げ集団の逃げ切りが決まってしまったこともあり、メイン集団はかなりハイペースで進みます。
逃げたい選手は大勢いるのですが、あまりにもメイン集団が速いため、逃げたくても逃げられない状況が続きます。
スタートから16km地点で、ようやく6名の逃げが決まります。
ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)
ミカエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
パヴェル・コチェコフ(ロシア、カチューシャ)
サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
スヴェン・エリク・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
という、全員ワールドツアーチーム所属の強力選手たちです。
特に、パンタノ、アルバジーニ、クヴィアトコウスキーはメダルを獲ってもおかしくない実力者です。
これだけの力を持った選手たちでないと、逃げが決まらないほど、メイン集団がハイスピードだったことが分かります。
メイン集団は、6名という少ない逃げ人数を決めさせたいため、一気にペースダウンします。イギリス、フランス、スペイン、イタリアあたりが先頭でコントロールしていたので、何らかの意思疎通があったようです。この動きは通称『ハッチを締める』と言われています。
逃げ集団はあっという間に7分以上のタイム差をつけて、周回コースへと突入していきました。
メイン集団はスペインとイタリアがローテーションしながら、コントロールしています。
石畳区間が非常に荒れていて、落車・メカトラ続出
想像以上に荒れていて、山岳の登りや長い平坦区間に対応するため、『パリ〜ルーベ』で使うようなショック吸収性の高いバイクに乗っていないため、とにかくバイクが跳ねて、落車やメカトラが続出しています。
↑通常は、比較的安全なコース(主に道路の端)を一列棒状に走る光景が見られるのですが、バラバラのコースを走っているので、どこも相当荒れているのだと思われます。
特にチェーンが外れる選手が非常に多く、有力選手もメカトラに見舞われていました。
↑バイク交換して、独走で集団復帰を目指すバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
なお、石畳区間では、危険回避のため集団前方で走ることが重要です。
わかっていても、集団前方に位置取りするためには、とても大きな力が必要です。
弱小国の選手、非ワールドツアーチーム所属の選手たちには厳しいものがあります。
その中で、イギリスとスペインが非常に良い位置取りをしていました。
イギリスは2016年『パリ〜ルーベ』3位のイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)というパヴェの名手が。
スペインは同じく『パリ〜ルーベ』9位のイノマル・エルヴィーティ(スペイン、モビスター)が、それぞれ集団前方に陣取って、石畳を走行していきます。
おかげで、イギリス・スペインの選手たちは落車・メカトラに見舞われることなく、安全に石畳区間を通過することに成功していました。
モレマだけでなく、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は何らかのメカトラ、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)はパンク、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)はチェーン外れ、フレフ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)も揃って何らかのメカトラと、集団前方を位置取り出来なかった有力選手は相次いでトラブルに遭っていました。
あとは、直線の平坦路を走って、後半のヴィスタ・チネサの周回コースに行くのみ!というところで、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が落車(コースアウト?)して、バイク交換するトラブルが起きました。
フルームのお付きを務めるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)のアシストによって、難なく集団復帰を果たしました。目立った外傷もないので、問題は無さそうです。
スティーブ・カミングス(イギリス、チームスカイ)らの牽きによって、逃げ集団とのタイム差は1分と縮まってきました。
いよいよ、終盤の勝負どころヴィスタ・チネサ周回コースへと入っていきます。
メイン集団からアタックがかかり、逃げ集団にブリッジして逃げ続ける
周回コースに入って、最初の登りでビストロムとアルバジーニが脱落します。
メイン集団はイタリアが牽引していますが、牽引役の一人であるダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)が集団破壊のためにペースアップします。
これが結果としてアタックとなり、ヴァンアーヴェルマートとゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がジョイン。
少し時間を置いて、レイン・ターラマエ(エストニア、カチューシャ)とセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)がブリッジして、5名の追走集団が形成されました。
メイン集団はヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)が先頭固定で牽引するなか、追走集団・先頭集団との差が詰まりません。
山頂を越え、ダウンヒルをこなし、長い平坦区間を抜けても、以前タイム差は30秒ずつあるなか、2周目の周回に入ります。
さらにメイン集団からブリッジ成功し、先頭集団がだんだん大きくなる
カストロビエホが力尽きた後は、オーストラリアの選手が先頭でペースアップを図ります。
ヴィスタ・チネサからのダウンヒルでメイン集団からヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らがアタックして、先頭集団へのブリッジに成功します。
また、このダウンヒルでリッチー・ポートが落車してしまいます。
粘りに粘ったクヴィアトコウスキーも脱落して、先頭集団は、
カルーゾ、アル、ニーバリ(イタリア)
ゲラント・トーマス、アダム・イェーツ(イギリス)
アンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、アスタナ)
ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
エナオモントーヤ(コロンビア)
ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)
ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)
という10名となりました。
平坦区間はカルーゾが先頭固定で牽いて、メイン集団から30秒のリードを保ったまま、3周目の周回へと入ります。
勝負のテクニカルなダウンヒルで、落車が続発
カルーゾが仕事を終えると、ファビオ・アルが先頭で集団牽引を開始します。
ここで集団を破壊するほどの牽きを見せることは出来ないままに、ニーバリにバトンを渡すと、ニーバリが力強く加速して先頭集団を引き離しにかかります。
このニーバリの動きに反応出来たのは、エナオモントーヤとマイカのみ。
残りの選手は20秒ほど後方に取り残されてしまいます。
一方メイン集団からは、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)、そしてクリス・フルームらがアタックして先頭を目指します。
ホアキン、マインティーズ、アラフィリップはニーバリら3名を追いかける追走集団にジョインすることに成功し、
ニーバリ、エナオモントーヤ、マイカの3名を、
トーマス、ゼイツ、フグルサング、ヴァンアーヴェルマート、ホアキン、マインティーズ、アラフィリップの7名で追いかける展開となり、最後のダウンヒルへ突入します。
イェーツは下がって、フルームのアシストをしていました。
このダウンヒルで、事件が起こります。
先頭を走っていた、ニーバリとエナオモントーヤが落車してしまいます!!
マイカは難を逃れ、単独で先頭を走ることになりました。ニーバリとエナオモントーヤに怪我はないか心配ではありますが、勝負を仕掛けている最中の落車は仕方がないので、マイカにとっては金メダル獲得がグッと近づく大チャンスが訪れました。
追走集団では、ゲラント・トーマスが落車して脱落。
マイカは23秒のアドバンテージを持って、最後の平坦区間へ突入しました!
マイカを追う追走集団は牽制モードに
またとない好機に、マイカは必死に逃げます!
追走集団では、最後のスプリント勝負に向けて力を溜めたい選手たちによって、若干牽制し合っています。
そのため、マイカ1人に対して、6名の追走集団にも関わらず、タイム差が縮まりません。
長い長いストレートで、先頭のマイカの姿をとらえたヴァンアーヴェルマートとフグルサングが共にアタックを仕掛けます!
決定的な差をつければ、メダルが確定するため、二人は協調しながらマイカを追いかけて行きます。
残り1km地点の手前で、とうとうマイカは二人に追いつかれてしまいました。
残り500m地点の最終コーナーをフグルサングが先頭で曲がります。
クライマーのマイカ、クライマー寄りのオールラウンダーのフグルサング、パンチャーのヴァンアーヴェルマートの3名によるスプリント勝負ですが、ここはヴァンアーヴェルマートが圧倒的でした!
2人を全く寄せ付けない加速で、ヴァンアーヴェルマートが先頭でゴール!
金メダルを獲得しました!
銀メダルはフグルサング、マイカは惜しくも3位で、非常に残念そうな表情を浮かべていました。
なお、新城幸也はヴィスタ・チネサの最終周回で遅れてしまったようで、ゴール争いには絡めず、27位で完走を果たしました。
あきさね的チェックポイント
序盤からよく働き、大胆に動いたイギリスの作戦は実らず
前半の周回コースは、スタナードの完璧な牽引により、予定通りだったと思います。
歯車が狂いだしたのは、周回コースを終えた直後のフルームの落車でしょう。
後半の周回コースでトーマスを先行させる作戦もハマったように見えましたが、結局トーマスは落車してメダル争いには絡めず、フルームも爆発的な追い上げを見せることなく、下位に沈みました。
イギリス勢だけでなく、エナオモントーヤやポエルスなど、ツールであれだけ猛威を奮ったチームスカイ勢は、さすがにお疲れだったのかもしれません。
ヴァンアーヴェルマートの登坂力が素晴らしい
今年のツールの第5ステージでも厳しい山岳の連続を独走で逃げ切ったシーンを思い起こされます。
先頭集団では、ヴァンアーヴェルマート以外は生粋のクライマーに近い脚質を持った選手ばかりで、ヴァンアーヴェルマートはどちらかと言うとスプリンター寄りのパンチャーです。
ですが、最後まで登りで遅れることなく集団に食らい続けた力が本当に素晴らしいです!
ツールでのステージ優勝&マイヨ・ジョーヌ獲得に続き、キャリアでも非常に大きな大きな勝利となりました。
2016年はGVA(フレフ・ヴァンアーヴェルマートの略)イヤーですね!
ワンデークラシックさながらのサバイバルレースでした
メカトラと落車の激しい、ワンデークラシックさながらのサバイバルレースを堪能することが出来ました。
とても見応えのある、スペクタクルな展開で、ほとんど目が離せませんでした。
あっという間の6時間で、個人的にも名レースの上位に推したいです。
今日走った選手たちのほとんどが、10日(水)に行われる、個人TTに出場することでしょう。
個人ロードとは全く異なる選手に活躍の場があります!こちらも必見です!
・サイクルロードレース専門サイトをつくりました
ブエルタ・ア・エスパーニャの情報を、随時更新中です。
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