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WBC準決勝を終えて、日本野球はアメリカに追いつくことが出来たか?

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メジャーリーグのオールスター級選手で構成された代表チームと、日本のトップ選手が集う代表チーム同士の対決は、WBCが初めてのことではない。

日米野球という形で、シーズンが終わった11月頃に開催されていたものだ。

日米野球の初開催は1908年。
まだ日本にプロ野球が無かった頃の話だ。

早稲田、慶応といった学生野球部の連合チームと、メジャーリーガー6名を含むアメリカ代表の対決は、17勝0敗でアメリカ代表の圧勝に終わった。

アメリカ代表に初めて勝ったのは、1922年のことだ。
1934年には沢村栄治の快投が光ったが、勝利には至らず。
1955年の日米野球が終わった時点で、通算成績は日本の5勝165敗5分。
勝率はわずか3%だ。

以来、日米野球は親善試合の模様を呈し、日本のトップ選手が本気で挑むものの、ことごとくメジャーリーガーに跳ね返されていった。

アメリカが日本野球を見下すのも無理はない。
両国のレベルの差はそれほどまで大きかったのだから。

その風向きを変えることになったのが、WBCであることは間違いない。

野茂英雄の活躍、イチローの活躍。
続々と日本人メジャーリーガーが誕生したことで、日本の野球レベルの高さをアメリカ人も感じてきたはずだ。

メジャーリーグが主催するWBCで、第1回・第2回と日本が連覇。
第3回はドミニカ共和国が優勝したが、アメリカ代表は一度たりとも決勝進出することが出来ず、2009年の4位が最高成績だった。

メジャーリーグ主催ではあったが、故障を恐れる各チームは有力選手の派遣を渋りに渋った。
ネームバリューはあれども、ピークを過ぎた選手や3Aとメジャーを行き来するような選手でチームが構成されていたのだ。

そこで、野球発祥の国の威信にかけて、第4回2017年大会はついにメジャーリーグ各チームに強い協力要請を出すことになる。
ついにアメリカが本気を出した。

そうして集まったメンバーはあまりにも豪華だった。
年俸総額はゆうに100億円を越え、リリーフ陣には各チームのストッパーが勢揃いした。

そして、今日。
本気のアメリカと、日本代表が対戦した。

過去の日米野球は親善試合に過ぎなかった

もちろん、出場する選手たちはプロフェッショナルなので、手を抜くということは無かっただろう。

少なくとも国の威信を背負った、ヒリヒリするような緊張感の張り詰めた試合ではなかった。
どことなくお祭りイベントな雰囲気に思えた。

第1回日米野球から109年。
WBC準決勝は、日本とアメリカが本当の意味で初めて、本気の真剣勝負を行う試合となったのだ。

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アメリカのスターティングメンバーは、

1番、セカンド、イアン・キンズラー
2番、センター、アダム・ジョーンズ
3番、レフト、クリスチャン・イエリッチ
4番、サード、ノーラン・アレナド
5番、ファースト、エリック・ホズマー
6番、ライト、アンドリュー・マカチェン
7番、キャッチャー、バスター・ポージー
8番、指名打者、ジャンカルロ・スタントン
9番、ショート、ブランドン・クロフォード
先発投手、タナー・ロアーク

だ。
年俸の総額は134億2900万円。

野手では、イエリッチ以外全員オールスター出場経験者である。
そのイエリッチも日本のベストナインにあたるシルバースラッガー賞を昨シーズン受賞している一流選手だ。

捕手のポージーは、メジャートップのフレーミング技術を有し、昨年の守備防御点はメジャートップの+12を記録している。

内野陣も鉄壁と言える陣容で、
サードのアレナドは2013年デビュー以来4年連続ゴールドグラブ賞を獲得、
ショートのクロフォードは、オランダ代表のアンドレルトン・シモンズを上回るUZR+21.3を記録し、現在メジャーNo.1の守備力を持っている。
セカンドのキンズラーもUZR+8.5と高い守備力を持ち、2016年は自身初のゴールドグラブ賞を獲得し、
ファーストのホズマーは、昨シーズンはUZR-8.4ではあったものの、2013〜2015年と3年連続でゴールドグラブ賞を獲得し、ロイヤルズの世界一に貢献した。

外野の守備は少々難がある。
イエリッチは平均程度の守備力ではあるが、
二次ラウンドのドミニカ共和国戦でホームランキャッチしたアダム・ジョーンズはUZR-10.1、
マカチェンは所属チームのパイレーツではセンターとして出場して、メジャー最下位のUZR-18.3を記録していた。

とはいえ、アダム・ジョーンズの派手なプレーはアメリカ代表に勢いをもたらしたし、
マカチェンも2013年にナ・リーグMVPを受賞したように、数字以上の影響を与えることのできる選手だ。

何より指名打者のスタントンは、北米スポーツ史上最高額となる13年390億円という凄まじい契約を締結したスーパースター選手である。
そんな選手が8番を打っているのが、アメリカ打線である。

投手陣では、先発のロアークは昨シーズン16勝をあげたものの、チームでは3番手投手だった。
クレイトン・カーショウ、マックス・シャーザー、ジェイク・アリエッタと言ったスーパーエースたちはさすがに招集することが出来なかった。
アメリカ代表の唯一のウィークポイントは先発だった。

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リリーフ陣は、
ナショナルズのセットアッパー、40ホールドで最多ホールドを記録したタイラー・クリッパード。
レンジャースの守護神、38セーブをあげたサム・ダイソン。
変則サイドハンドで、アストロズで33ホールドをあげたパット・ニシェク。
そのアストロズの守護神・セットアッパーで、15セーブ・15ホールドをあげたルーク・グレガーソン。
ホワイトソックスのセットアッパーで、28ホールドで最多ホールドを記録したネイト・ジョーンズ。
そのジョーンズの後にストッパーとして登板し、37セーブをあげたデビッド・ロバートソン。
打者天国のクアーズ・フィールドを本拠地とするロッキーズの守護神、ジェイク・マギー。
そして、74.1回で123奪三振を記録したメジャー屈指の左腕リリーバーであるインディアンズのアンドリュー・ミラー。

凄まじいまでの豪華メンバーである。
いかにアメリカ代表が本気なのか、よく伝わる人選である。

本気のアメリカ代表と、互角に戦う

これほどのメンバーが集まるアメリカ代表を相手に、侍ジャパンは2-1というロースコアで敗戦した。

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2失点の内訳は、菊池のエラーと松田のエラー(のようなプレー)による失点である。
1得点は、菊池のソロホームランのみだった。

たらればだが、日本の守備の乱れが無ければ1-0で勝てたかもしれない。
それくらい、アメリカの130億円打線を抑え込んだ先発の菅野や千賀を始めとする日本の投手陣は素晴らしかった。


アメリカ代表監督は、ジム・リーランド。
2006年、低迷していたデトロイト・タイガースの監督に就任し、22年ぶりのリーグ優勝に導いた経験を持つ。
在任8年の間に、5度のプレーオフ進出、2度のリーグ優勝を果たした名将中の名将だ。

リーランドはチームビルディングが非常にうまいし、選手起用も素晴らしかった。
ネームバリューにとらわれず、好調の選手を重用し、スタントンを8番で起用するシビアな采配をふるった。

アメリカ代表の真骨頂は打線にあらず、守備にあると判断し、
投球の大半が微妙に変化するツーシームを武器とするロアークを先発させ、見慣れない球筋に、侍ジャパン打線はゴロの山を築くだろうと予見した。
あとは、鉄壁の守備陣がどんどんアウトに捌いてくれる算段だ。

この采配が見事的中し、侍ジャパン打線はロアークの前に手も足も出なかった。
5回裏からメジャー屈指のリリーバーを惜しみなく投入する継投策に出て、日本は菊池のソロホームラン1本で反撃するのがやっとだった。
そのホームランもイニングまたぎとなったネイト・ジョーンズの2イニング目に放ったものだ。

完全にリーランドの術中どおりの展開となった。

このように、アメリカはほとんどベストに近いメンバーを集め、名将の完璧な采配どおりの展開となり、特段ミスもなく、選手が最大限のパフォーマンスを発揮していた。
にもかかわらず、結果は2-1の接戦。

つまり、侍ジャパンは本気のアメリカと互角の勝負をすることが出来たのだ。
もはや日本野球界は、アメリカ野球にほとんど追いつくところまで来たと言えるのではないだろうか。

もちろんアメリカ代表選手の打球や投球のスピードは桁違いに速く、根本的なパワーの違いは大きい。
しかし、コントロールの正確さ、球のキレ、バントなどの小技、モーションを盗むなど緻密さ。
試合に勝つための総合力は、互角だったように思える。

10年前は毎年のように日本人メジャーリーガーが誕生し、イチローや松井秀喜を筆頭とするスーパースターと呼べる選手が何人もいた。
最近の日本プロ野球は、大谷翔平の存在はずば抜けているが、イチロー・松井秀喜・松井稼頭央・松中信彦というような10年前の日本プロ野球の圧倒的なスター感と比べると、いまのプロ野球界は見劣りしてしまう気持ちは否めなかった。

しかし、今日のWBC準決勝でその認識は誤っていることがわかった。
日本プロ野球全体のレベルが向上したため、イチローや松井秀喜のようなズバ抜けて突出した選手が現れにくくなっただけなのだと。
とりわけ投手陣のレベルが10年前と比べると、今のほうが遥かに高いと思う。

なにしろ、大会打率.615、4HR、12打点のウラディミール・バレンティンを.269・30本に抑え、
4割を越える打率を誇る小林誠司を、打率リーグ最下位に抑えることが出来ているのだから。
…というのはさすがに冗談だが。

侍ジャパンは準決勝で敗れはしたが、2013年のような悔しさ・虚無感はさほど感じない。
むしろ、本気のアメリカと互角に戦った侍ジャパンを誇りに思う。

WBCの次回開催は未定ではあるが、興行的にも大きな成果をあげているので、是非とも次回開催してほしい。

今度こそ本気のアメリカを打ち破り、真の世界一の座をつかむこと切に願う。