大手自転車メディアの仕事をするようになって1年半ほど経ちました。
元々はライターとして、自転車レース速報のレポートやコラムを中心に書いていましたが、最近では自転車レース現場に赴いて写真撮影をしながら記事を執筆する機会が増えてきました。
その際に使っているカメラはソニーのミラーレスカメラのα6000です。ダブルズームレンズキットで7〜8万円くらいの、デジタル一眼ではお手頃といえる機種です。
自転車レース撮影の現場に行くと、ミラーレスを使っている人は全くといっていいほど見かけません。明らかに小型なカメラを携えてフィニッシュラインのフォトグラファーゾーンに立ち並ぶことに、ただただ恐縮の気持ちを抱くばかりでしたが、逆にそういった現場でミラーレス一眼を使って仕事をしてきたという知見は貴重なのではないかと思うに至ったのです。(開き直り!)
結論から言えば、自転車レース撮影の現場において、α6000の性能では厳しい場面があります。しかし、状況によってはα6000でも戦えないことはないことかわかったので、α6000を使って自転車レース撮影の仕事をしてきて思ったことをまとめてみたいと思います。
動きの少ないチームプレゼンや表彰式
(2018年ツアー・オブ・ジャパン南信州ステージ表彰式にて)
比較的静止している対象であれば、もちろん綺麗に撮影できます。
秒間11コマの連写も可能なため、笑顔の瞬間を見逃さず、まばたきした瞬間を避けたカットを撮ることができました。
(2017年ジャパンカップサイクルロードレース チームプレゼンにて)
日没後の屋外、特設ステージにて撮影したため、ステージ上の場所によってはやや光量が不足する箇所もありました。
それでも、選手の肌や自転車の質感は、現場で見た感じそのままに収めることができました。
(2018年さいたまクリテリウム チームプレゼンにて)
※メディアに掲載
晴天の屋外ながら、特設ステージ上の照明がフレームに入り、逆光になる状況で撮影。こういうパターンで選手たちの表情が暗めに写ってしまいます。設定の問題で解消できるか不明なのですが、写真自体を後から加工すれば表情を明るくできるので、わたしは別にいいかなというスタンスで撮っていました。
沿道横からの撮影(横方向へ移動する対象物)
(2018年ツアー・オブ・ジャパン 南信州ステージにて)
※メディアに掲載
上り坂を走る選手を沿道脇から撮影。ななめから撮影しているので選手との距離は7〜8mくらいでしょうか。そこまでスピードが出てないのでAFの追従も素晴らしく、横への動きのある写真は綺麗に撮れると思います。
横へ動く対象へのAFはとても合わせやすいです。後ろの観客にピントが合うことなく、狙い通りに写真に収めやすく安心感があります。撮影対象との距離は10〜15mほどでしょうか。
なので、真横に移動する対象の流し撮りは非常にやりやすいと感じました。
上り坂区間で、スピードは時速30km程度と思われます。このように何列も隊列をなしている集団の中にいる対象を写そうとした場合、AFが迷子になりやすいです。この写真は十分見やすいですが、ピントを狙った対象に合わせずらく成功率は低いので、集団を横から撮るのは避けたい構図という体感があります。
ゴールスプリントなど(向かってくる対象物)
(2018年ツアー・オブ・ジャパン 南信州ステージにて)
※メディアに掲載
スプリントしている選手のスピードはMAX時速70kmほど。この時は恐らく時速50〜60kmくらいと思われますが、画面奥から手前に向かって高速で近づいてくる対象へのAFを合わせるのはとても難しいです。
この写真はたまたま真正面に対象が来たため、周りの物体にピントを取られることなく対象にビシッと合った写真を収めることができました。
同じ場所から、右側の車線方面にカメラを向けて撮影したケースの1枚。これはこれで味わい深い写真なのですが、本当は手前の青いジャージの選手にピントを合わせたかったのです。沿道の柵や観客にピントを取られてしまい、手前寄りの狙った対象にピントを合わせ直すには対象のスピードが速すぎて対応できないことが多いです。
(2018年ツアー・オブ・ジャパン いなべステージにて)
※メディアに掲載
こちらは後ろのコース脇の旗にピントが合っていて、ガッツポーズをしている選手にはピントが合っていません。しかし、ゴールの瞬間を収めた写真のなかで一番まともな1枚ということで、ピンボケした写真をメディアに掲載することになりました。
このように自分に向かってくる対象にピントを合わせのは難しく感じます。自分に正対した対象は、中央のAFポイントにずっと収められるため、比較的にピントが合いやすいように思えます。しかし、少しでも中央からズレたり、自分に向かって垂直でなくややナナメに向かってくる対象にピントを合わせることが難しく思えます。
AFエリアを「中央重点」に設定にすればだいぶピントを合わせやすくなるのですが、それでも狙った対象以外にピントが持って行かれることもある上に、いちいちメニュー画面を呼び出して切り替えねばならない点がかなり面倒です。
まとめ
これはカメラの性能だけの問題ではないと思っていましたが、別の仕事でデジタル一眼レフカメラのCANONの7D Mark IIを使って撮影した時は、向かってくる対象物もピントを合わせやすく安心して撮影できる感覚がありました。
したがって、カメラ初心者が自転車レースのように非常に速い対象を撮影する場合は、一眼レフの中位〜上位モデルを用意した方が明らかに扱いやすく、コストパフォーマンスの良い投資だと思います。
ちなみにCANONの7D Mark IIを望遠レンズまで揃えた場合、ソニーのα6000に比べて価格が4〜5倍程度高くなります。十分な予算がない場合は現実的に難しい選択肢となるでしょう。
改めてメディアに掲載した写真を眺めると、そこまで酷い写真ではないのかなと思います。これが紙媒体やポスターに使用する写真となると、ピントが甘いまま使うわけにいかないので実使用に耐えませんが、解像度の低いWebメディアで使う写真に限っていうなら、ミラーレスでも十分に戦えるのではないかなと思っています。画質や背景のブレの大きさを追及しないのであれば、センサーサイズがフルサイズである必要もないため、APS-C機種で十分だと感じました。
とはいえ、シビアなAF性能が要求される場面では力不足を感じるため、買い替えを検討しています。
前述したCANONの7D Mark IIも候補の一つです。
ですが、一眼レフよりもミラーレスに魅力を感じてしまいます。ファインダーの違い、シャッターの動作など、一眼レフとミラーレス一眼の違いを色々教えてもらったり、調べたりしましたが、自分の使い方ではどちらでもいいかなと思っています。
今後、カメラの技術が向上したら一眼レフが良いとか思うかもしれませんが、毎日・毎週撮るわけではないので、だったら軽いミラーレスでいいかなと。
手持ちのα6000のレンズを使い回しできて、値段もお手頃なα6500が現在の最有力候補です。
買い替えは急いでないので、もう少しじっくり考えて検討します!