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「今日の味は忘れてくれ」と言われたラーメン【一条流がんこ総本家】

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「忘れられない味」は聞いたことがあるし、思い浮かべるものがあります。

しかし、「忘れてほしい味」は聞いたことがないし、思い当たる節がありません。

四谷三丁目にある、一条流がんこラーメン総本家に行ってきました。

念願の訪問です。

平日の11時40分に店に到着。しかし…

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まず、とんでもない大行列です。11時40分の時点で、ざっと30人近くは並んでいました。これが土日ならまだ理解出来るのですが、何てことはないただの平日の木曜日です。

この時は「人気店はさすがだなあ」くらいにしか思っていませんでした。

さて、今回も超人気ラーメンスタグラマージロガーのキリヲさん(id:standaloneramenjiro)に連れて来てもらいました。

初めて来る店では、何を注文したらいいのかが分かりません。そこで、キリヲさんに何を頼めばいいか?と聞くと、「初めてなら『100』がいいですよ」と言います。

一条流がんこラーメン総本家のラインナップは2種類です。

透き通ったスープの『自由が丘(=上品な味わいで、自由が丘は上品な街のイメージだから自由が丘とのこと)』と、

醤油魚介ベースの濁ったスープの『下品』。

『下品』には、タレを入れていないor少なめの『100』と、タレの入った『下品』、そしてタレが数杯入った鬼塩辛い『悪魔』の3種類に分かれています。

一条流がんこラーメン初体験の人は、まずはがんこのインパクトも堪能しつつ、『下品』や『悪魔』に比べれば塩辛さが控えめな『100』がオススメとのことでした。

予備知識を仕込んでもらいながら、行列に並ぶこと30分くらい経過したころ、突然のショータイムが始まりました。

家元が店の前でラーメンをすすってるwww

『今日のはうまい!あ〜!うめぇ!』という声の先には、明らかに家元らしきおじいちゃんが、白いどんぶりを片手に持ちながら、普通にラーメンを立ち食いしていました!w

『食うか?』なんつって、並んでいるお客さんに勧めている始末です。

さすがに面白すぎました。飲食店の店主が営業時間中に店の前に並んでいる行列の客の前で、自分の店の料理を食べながら『うめぇ!』という人は、いまだかつて見たことがありますか?

ましてや、今から家元が『うめぇ!』と言っているものを食べるために並んでいる客に、食べかけのものを『食うか?』なんて勧める店主は、世界中探しても、一条流がんこラーメン総本家以外に無いのではないかと思うレベルの衝撃的な光景でした。

さすがに、あまりにも未知すぎる光景に面食らっていると、キリヲさんが補足してくれます。

「家元は、自分のラーメンがうますぎるから自慢してるんだよ」と。

さっぱりわからん!

ただ、期待感は高まります。

なぜなら、『うめぇ!』と言う家元の横顔は、新作のゲームを目の前にした子供のような無邪気さでしたから。

など、盛り上がっていると、あっという間に1時間が経過して、いざ入店です!

いよいよ『100』もとい『140』ラーメンとご対面!

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店の入口には『本当にラーメンが大好きな方、どうぞお入り下さい。』と貼り紙してあります。少なくとも『うめぇ!』と言ってる家元は、究極のラーメン好きであることは十二分に伝わりました。

カウンターに着席して、「『100』で!」と伝えると、家元は「今日のは『140』だ!」と言いました。

どういうことですか?と聞くと、

『昨日の出来も最高に良かったけど、今日のはそれ以上だ!午前中はいまいちだったけど、11時半くらいにコレだってなって、昨日の出来を越えたんだよ!今日のラーメン食べたら、今日の味は忘れてね。じゃないと普段の食べられなくなるからね!今日の味は忘れるんだよ!』

と言いました。

うん、解説が必要ですね。

まず、家元は営業時間中でも、スープの改良・調整に余念がありません。

納得の味が出来るまで、たとえ営業中でも調整し続けます。

そして、『140』というのは比喩表現で、普段は『100』というメニューで提供されています。

普段の『100』も『100』と言うくらい、美味しいものなのですが、今日の出来はあまりにも素晴らしいから『140』になったそうです。

だから、『140』の味を知ってしまうと、普段の『100』が見劣りしてしまうので、「今日の味は忘れてね」と言うのです。

という一連のやり取りを、家元は初めて雪を見た幼稚園児のような、あどけない表情をしながら満面の笑みで語りかけてくるのです。

暖かな家元さんの笑顔に、否が応でも『100』改め『140』への期待感が膨らみます。期待感だけではなく、胃袋の空き容量も膨らみ、いまだかつてこれほど目の前にラーメンがやってくるのを心待ちにした時間はありませんでした。

そうして、いよいよ着丼です。

これが家元の『140』ラーメン!

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肉の見た目が凄いですが、真っ先に感じるのは写真からは伝わらない『匂い』です!

この日の『100』改め『140』は、一条流がんこラーメン総本家 公式ブログによると、

大量の姿煮干しを使った(煮干しの魚粉ではない) 魚粉は姿煮干しの半分の量で済むが‰ 独特のエグ味が残ります!

食べれなかった方々が未だ未だいらっしゃるので! 明日も大量姿煮干し ヒロポンをやりましょう♪ 煮干し満開ですが、 エグ味の無い正統派のスープです!
※『今日の煮干しヒロポンは最高◎♪ - 一条流がんこラーメン総本家 公式ブログ』より

とのことです。

店中に漂う煮干しの香りが、何よりも最初にわたしの身体の中へと入っていきます。

家元も「今日のヒロポンは最高だよ〜!」など言っています。

『ヒロポン』とは、その名の通り『ヒロポン』です。

要は、『140』ラーメンの根幹をなす、メインの出汁みたいなものです。この日はその出汁に『大量の煮干し』を使っているというコンセプトでした。

さて、目の前のどんぶりに話を戻しますと、上に乗っている豚肉の塊たちも目を惹きます。

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濃厚タレに使ったバラ肉。

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厚切りチャーシュー。

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そして、味玉です。

これらは標準のトッピングです。これらのトッピングを含めて『140』ラーメンとなっていて、お値段は破格の700円でした!(※現在は800円です。それでも十分すぎるくらい安いです)

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麺は一般的な中細麺です。

いざ実食!スープのインパクトが脳天直撃クラッシュキングダム!

ただならぬ、煮干し臭の元が詰まったスープを、まずは一口いただきます。

予想通り、煮干しの強い風味と、醤油の塩辛さが最初にズドンとやって来ます。

しかし、次の瞬間には煮干しと醤油の強い風味の奥底からやってくる謎の味のストリームにもまれて、わたしの口の中と、味覚を処理する中枢神経が完全に錯乱状態に陥りました。

「なななな、なにコレ!?!?!?」

と、明確な言葉がすぐには見つかりません。謎すぎます。新しすぎる感覚です。

続いて麺をひとすすり。実にうまい。さらに豚バラ肉をパクり。その瞬間、再び未知のエクストリームがフィーバータイムです。

どうやら正体は、タレにあることは分かりました。これが噂の『ヒロポン』の味であることも。

食べ進めるうちに、ようやく言語化出来る程度に感覚がつかめてきました。

『140』ラーメンのスープを言葉で表現するなら、『ただならぬ煮干しと醤油のインパクトの後、カツオや鯖の佃煮のような、何だか甘いような、塩辛いような、それでいて生姜や大根のような野菜の旨味を感じるような、今までに口にしたことのある海と大地の旨味成分が全て凝縮されたような、味覚のクラスター爆弾が炸裂した味』とでも言いましょうか。

恐ろしく難解な味わいながらも、抱いた感想はシンプルに『うめぇ!』でした。

本当にうまいのです。

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中盤でカエシをレンゲ半分くらい入れてみます。このカエシを加えることで『140』が『下品』となり、『下品』が『悪魔』となるのです。

カエシを加えたスープは確かに悪魔的な塩辛さを放っていました。

濃厚なタレにしっかりと浸かった豚チャーシューも堪能しながら、このスープは完飲するしかないと感じ、どんぶりを両手で持ってスープをすすっていきます。

『うめぇ!』けど『しょっぺぇ!』という葛藤の最中、無事にKKフィニッシュ!

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お冷を二杯飲み干してから、退店しました。

しょっぱさが後を引くかと思いきや、上品な煮干しの香りが体内に充満

これだけ塩辛いラーメンを食べた後は、喉が乾いて乾いて仕方ないと思います。

しかし、一条流がんこラーメンを食べた後は、不思議と喉が乾いて乾いて仕方ないという事態にはなりませんでした。

塩分とは攻撃的な成分で、体内に取り込むことは、すなわち身体的なダメージを与えるパンチであると思っていました。

しかし、一条流がんこラーメンの塩分は、攻撃的ではあるのですが、ドクターフットが足裏のツボを強烈に刺激してくるようなもので、味覚のツボを徹底的に攻撃された後は、全神経が旨味成分に繊細になり、ただでさえ濃厚な煮干しの風味を余すこと無く全身で堪能するような仕組みになっているのだと分かりました。

一条流がんこラーメンは、食べ終えた後が本番です。この余韻も含めて、『がんこ』のエンターテイメントは完結するのです。

そして、このエンターテイメントは一期一会です。

家元のブログによると、

今日はバランスを取った煮干しラーメン でした〇! 特に最後の方は煮詰まってガツンと♪

1日だけでは、 食べれない方々が未だ可なりいらっしゃるので明日もやりましょう! (年内に後1回はやります)
いやー、旨かった♪ - 一条流がんこラーメン総本家 公式ブログ

とあります。

『ヒロポン』は家元の気分やノリによって、味が毎回のように変わるのです。

今回食べた『煮干しヒロポン』は、明日行っても食べられるとは限らないのです。

「今日の味は忘れてくれ」の意味が、ようやく分かった気がします。

一条流がんこラーメンのスープの基準は、魚介ベースとか醤油ベースとかそういう次元ではありません。

家元が『うめぇ!』と思うかどうかです。ならば、家元の気分・体調・ノリ次第で味が変わっても何ら不思議ではありません。

そして、家元は誰よりも一条流がんこラーメンが好きで、誰よりもラーメンを愛する人です。

だったら、ラーメン好きな人は必然的に通うじゃん?という話になるのです。

わたしは、間違いなくがんこに通うことになるでしょう。

あの日食べた『忘れられない”忘れてほしい”味』を求めて、『うめぇ!』と言う家元の笑顔を見るために。

また一つ、わたしは無限回廊へと歩みを進めてしまいました。