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クリス・フルームが観客を殴り、罰金が科される。フルームと観客どっちが悪いの?

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ツール・ド・フランス2016 第8ステージで、クリス・フルームの圧倒的なダウンヒルによって、ステージ優勝を飾りました。

ところが、このステージの途中で、事件が起きていました。

問題となったシーン

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登りで集団走行をしている際に、フルームの脇を観客がコロンビアの国旗を掲げながら走っていました。

すると、フルームが観客に思いっきりエルボーを食らわしています。

http://www.telegraph.co.uk/content/dam/news/2016/07/10/froome-large_trans++qVzuuqpFlyLIwiB6NTmJwfSVWeZ_vEN7c6bHu2jJnT8.jpg
Chris Froome fined for elbowing spectator in face on the way to stage-eight Tour de France victory

この行為が「不適切な行為」であると、UCIコミッセールにジャッジされ、罰金200スイスフランを科されました。

山岳で、観客が選手の横を走って応援(目立とうと)するのはよくある光景

第8ステージ、最後の1級山岳ペイルスールド峠(平均勾配7.8%)の登りでの走行データです。

f:id:saneyuu:20160712124214p:plain
https://twitter.com/letourdata/status/751816284237656064

概ね時速18キロほどで走行しています。時速18キロは50mを10秒で走るスピードなので、割と全力で走れば届きそうなスピードです。

問題となった動画のシーンでは、スカイのアシストを多く残している状態なので、もしかしたらこの手前の山岳でのシーンかもしれませんが、山岳では観客が走って追いつける程度のスピードで走行していることは珍しいことではありません。

ある意味ツールの名物ではありますが、近年ではアシストを多く残し集団で山岳を登ることが増えたためか、選手と観客の接触が目立ちます。

第9ステージでも、ジョージ・ベネット(ロットNLユンボ)が沿道の観客と接触しているシーンがありました。

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何より、フルーム自身、過去のグランツールで落車で負った怪我が原因でリタイアすることもあったので、こういった接触に対してナーバスになっていたことでしょう。

フルームが落車リタイア ボームが大波乱の石畳ステージを制す - ツール・ド・フランス2014第5ステージ速報 | cyclowired
ファンポッペルが第12S制覇、フルームが落車の影響で棄権 ブエルタ・ア・エスパーニャ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

過去には、観客を殴って一発退場となった選手もいる

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2001年のジロ・デ・イタリアでは、観客を殴った選手が、ジロから追放される出来事がありました。

ウラジミール・ベッリという選手が、ライバル選手であるジルベルト・シモーニのファンから罵声を浴びせられ、我慢できずに殴ってしまったようです。

結果的に一発追放です。

では、今回のフルームの一件はそれに該当しないのか?と思います。

確かに、フルームの横を走っていた観客はコロンビアの国旗を持っていたので、コロンビア出身のナイロ・キンタナ(モビスター)のファンである可能性は高いでしょう。

キンタナのファンが、フルームに罵声を浴びせて、カッとなったフルームが殴った可能性はないのでしょうか?

もし、そうであれば、200スイスフランの罰金は軽すぎる処分ではないでしょうか。

フルームはカッとなって、人を殴るような選手ではない

昨年のツールでは、こんな出来事もありました。

カミングスが歴史的ツール初勝利も、フルームが尿かけられるアクシデント 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

クリス・フルーム(Chris Froome、英国)が観客に尿をかけられるアクシデントがあり、歓喜のムードはかすんでしまった。

フルームは、今大会におけるスカイの成功について、一部メディアが「無責任な報道」を行った結果、今回のアクシデントを招くような「風潮」が生まれたのだと厳しく非難した。

ステージ終了後、フルームは「50~60キロ付近にいた観客が、カップに入った尿を僕にかけて、『ドープ(ドーピングしている)』と叫んできた」と明かした。
(上記事より一部引用)

また、この記事ではフルームのアシストを務めるリッチー・ポート(オーストラリア、現BMCレーシング)も、沿道の観客から殴られたと書いてあります。

ちなみに、この「無責任な報道」とは、フランスメディアが『フルームにドーピング疑惑あり』みたいなことを報じたことでしょう。

サイクルロードレース界全体の問題でもありますが、強すぎる選手に対してドーピング疑惑の目が向けられることは仕方ない部分があります。

フランスメディアを始めとする一部のフランス人は、イギリス人であるフルームに、憎悪にも似た敵対心を持っていることは明らかです。

その気持ちが増長した結果、尿をかける、アシスト選手を殴る、などの蛮行に及んでいるのだと思われます。

ところが、フルームは冷静にレースを行い、レース後にしっかりと自らメッセージを表明して対応しています。

フルームに実際に会ったことのある、第9ステージで実況を務めていたサッシャさん、解説していた宮澤崇史さんらも口を揃えて「フルームはそんなことをする人ではない(カッとなって人を殴る)」と言っていました。

今回の一件についても、レース後に自身のTwitterでメッセージを出しています。

『観客の持っていた旗が、自分のホイールに巻き込まれたり、ハンドルにひっかりそうになって危険だったから、手で払おうとした』みたいなことが書いてあります。

危険回避のための行動であったと言えましょう。

UCIコミッセールも、本件を客観視して、危険回避のための行動であり、暴力の意図は無いものの、さすがに観客の顔にクリーンヒットしていることは事実なので、200スイスフランの罰金を科したものと思われます。

観客の観戦マナーが問題であるが、ツールの一部と思って対処するしかない

観客近すぎる問題は、ずっと前から話題になっていることです。

ツール・ド・フランスというイベントが、フランス国内では自転車レースに興味ない人にとっても重大なイベントであることから、一部の騒ぎたいだけみたいな観客が増えることは仕方ない部分だと思います。

かと言って、全ての沿道に仕切りや柵を設けるということは、全長3500kmに及ぶツール・ド・フランスではコスト面、交通規制面で現実的ではありません。

これからもこういった事案は度々起きると思いますが、改めて選手は最大限危険を回避しながら走るしかないのかなと思いました。

(追記)

と言ったそばから、事件が起きてしまいました…。

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選手の危険回避の努力だけではどうにもならなかった事案でしょう。

UCIとASOには対策を講じていただきたいものです。

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