「レディボーイ、レディボーイ」
と3回くらい、わたしに向かって話しかけてきたおじいさんがいました。
場所は、アムステルダムで最もホットな場所である、旧教会周辺の地区です。
ブルート通り(Bloedstraat)からアウデゼイズ・アフテルブルグワル(Oudezijds Achterburgwal)に出る曲がり角のあたりで、おじいさんに話しかけられました。メガネをかけた、初老のおじいちゃんと言った風貌です。浮浪者ではなさそうです。
レディボーイの意味はGoogle先生に聞いてください。
とにかく、わたしは話しかけられた場所と文脈で「レディボーイ」の意味を理解し、「レディボーイ」と教えてくれたことで、救われたのです。
そこから定番の「どこから来たの?」に対し、日本と答えると「私も4年前くらいに行ったよ」と言っています。
わたしたち東洋人に話しかける人は、アジア諸国に訪れた経験があって、好印象を持っている人なんだろうなと思います。
そんなやり取りを何回かすると、「この辺を案内してやろうか?」みたいなことを言ってきました。わたしはこういう誘いは全部乗ることにしているので、「OK!センキュー!」という感じで案内してもらうことにしました。
アムステルダムの旧教会周辺の地区は超カオス
事前の調査と、アムステルダムに来てからの探索で、どのような場所であるか概ね理解はしていました。
しかし、亀の甲より年の功。おじいさんの豆知識は深く深いところまで根差しておりました。
「コーヒーショップ」と聞いて、何を思い浮かべますか?
スタバとか、ドトールのような、コーヒーを提供する店のことを思い浮かべると思います。
アムステルダム、もといオランダでは「コーヒーショップ」と言うと、合法的なドラッグを扱うお店のことを言います。
このあたりまでは、ガイドブックにも書いてあるのですが、なぜドラッグを扱うお店が「コーヒーショップ」と呼ばれるのかまでは、あまり知られていないと思います。
元々、オランダではあらゆるドラッグを規制していました。しかし、裏でドラッグは流通し、国と違法なブローカーたちとのいたちごっこが続いていました。
規制をしても摘発件数は減らないし、ならばいっそ合法化して課税して税収をいただいちゃおう!という発想で、ヘビーではないライトなドラッグを合法化したという経緯があります。
合法化する前に「コーヒーショップ」という名前を隠れ蓑にして、ドラッグを買える店を営業していたそうです。「コーヒーショップ」という名前で営業を始めて、割とすぐにドラッグの合法化が始まったため、「コーヒーショップ」という名前だけが残ったそうです。
そして、新しく出店するお店も、老舗にあやかって「コーヒーショップ」という名前でお店を出すことになったそうです。
老舗の「コーヒーショップ」は『ブルドッグ』というお店です。アムステルダム市内にフランチャイズのように複数店舗あります。
コーヒーを飲みたければ、「Cafe」か「Bar」に行きなさいと。また「Coffee House」はコーヒー豆を売っている店だからね。などと、豆知識をいくつも披露してくれるのです。
ただ、一つだけ気になるのは異様に距離感が近くて、話す時や移動するときに、わたしの腕やお尻をさすりながら、しゃべっていることです。
わたしの中学生レベルの英語力でも理解出来るほどの平易な英単語を使って、分かりやすく説明してくれました。
アムステルダムの建物の歴史
こちらの写真にある「1618」という数字は何を表しているでしょうか?
わたしは、住所だと思っていました。
おじいさんは、「建築された年を書いているよ」と言っています。
正確には、そのように聞こえたのですが、実際に建物には「1618」とか、その隣は「1619」と書いてあるので、まさか建築された年とは思わず、住所なんじゃないの?聞き間違いかな?と思って、「じゃあこの建物は、400年経ってるんですか?」など聞き返していました。
すると、マジで建築年数なんだと理解しました。
「信じられないです!日本では50年とかで超長いです。なぜなら日本では地震が多いですから。(Amazing!In Japan, 50 years is very long!Because Earthquake.)←このレベルの英会話でも十分通じる」なんて反応をしたりしながら、アムステルダムの建物の歴史を教えてもらいました。
なお最も古い建物が旧教会です。
そして2番目に古い建物が、現在はBarとなっている建物です。
ガイドブックには1番は載っているかもしれませんが、2番目はなかなか載っていないと思います。
確かに「1519」と書いてあります。
500年近く現存している建物すげえ!と感動ですよ。
おじいさんはもはや無料のツアーコンダクターです。
さらに建物に関するうんちくを披露します。
「あの建物の上の方の出っ張り部分にあるフックが見えるかい?あのフックは一体何のためについているか分かるかい?考えてごらん」
と言ってきました。
いろいろ思いついたんですけど、英語で何と言えばいいか分からなくて、「I don’t know!」と言いました。
「古い建物は入り口が狭いし、階段も狭い。だから家具を運ぶときに、フックをつかって家具を吊り上げて運び入れていたんだよ」
と教えてくれました。
なるほど〜。としか言いようのない、豆知識です。もし他の誰かをアムステルダム案内することになったら、絶対にドヤ顔で言いたくなるトリビアです。
そうこうしていると「Do you like Beer?」と聞かれました。
あまり好きではなかったですが、飲みに行く?と誘われたので、「Yes, I like」と答え、近くの酒場でビールを飲むことにしました。
ただ、一つだけ気になることは、お店に行こうという時にわたしの肩を抱き寄せながら歩を進めって行ったことくらいです。
オランダと言えば、ハイネケン!
おじいさんにとっては、わたしのことは、客扱いです。
ここに来る途中に年齢を聞いたところ、61歳とのことでした。わたしの父親と同年代の方で、もう親みたいな感じでした。
「ハイネケンでいいか?」と聞かれ、他のがいいですとか、カクテルをくださいとか言うのも面倒だったので、「Yes please」作戦で行きます。
わたしから「How much?」と聞いて、お金を払う意思を見せようとしたところ「いいよいいよ、おごるよ」と言ってもらいました!やったぜ!タダ酒だ!
店内では、おじいさんが日本のどの都市に行ったことがあるのか?何が良かったか?など、いろいろ話してくれました。
ちなみに、長崎の出島や、長崎・広島の原爆記念館が興味深かったそうで、広島のお好み焼きが美味しかったが、生魚は嫌いなので、東京ではPRONTOに行ってピザやパスタを食べたと言ってました。
わたしからも話題提起をして、せっかくなんで積極的にコミュニケーション取ってみました。
例えば京都は紅葉が美しいと言いたい時に、「紅葉」って何て英語で言えばいいか、皆目検討もつかないわけです。
そんな時は現地SIMを刺したタブレットの出番です!
Google翻訳に「紅葉」と入力すると、「Autumn leaves」と出てきました。
「Autumn leavesってのは、(わたしが持っている京都の紅葉の写真を見せながら)このことだよ。葉っぱが赤いんだ。」と言うと、「これが秋なんだ、綺麗だね」みたいな感じで、やり取りを続けて行きます。
なんだかんだで1時間くらい酒場でしゃべったと思います。
この時点で日が暮れてきたので、最後にまだ紹介していない旧教会地区周辺を案内してくれるという流れになりました。
ちなみに、酒場で気になったことは、わたしの手を軽く握りながら、わたしの話を聞いていたことでしょうか。
Hotelクライシス
中華街ストリートを歩きながら、「このタイ料理屋はいつも混んでる」「ここの中華は美味しいぞ」的な話をしながら、ニーウマルクト広場(Nieuwmarkt)に向かいます。
このニーウマルクト広場には教会風の古めかしい建物があります。この建物は何かということを教えてくれました。
英語が分からなすぎて、間違っている部分もあるかもしれませんが、1600年頃にアムステルダムで戦争があった時に、アムステルダムの防衛拠点として使っていた場所だそうです。
「Like a castle?」と聞いたら、「Yes」と言っていたので、砦のようなものかな?と思います。それにしては規模が小さいんですけどね。
問題はあの建物だよ!と指差ししながら教えてくれるのですが、都度空いている方の手で、わたしの腰に手を回してくることです。
おじいさんは「次はどうしようか」みたいなことを言っています。何でもいいよ的な反応をしたところ、「ホテルは?」という感じで聞かれました。
えっ!?と思いました。ついに来たかと。いやいや、でも自分が宿泊している場所を聞いているだけかもしれないし、と思って「もう一回言って?」と何回か聞いたら、どうやら「あの建物は若者に人気なユースホステルだ」と言っていただけみたいでした。
ところが、またもや、最初にWから始まっていそうな疑問文で「ホテル」「ゴー」という単語だけ理解出来た文章を話して来ました。
得意の「パードゥン?」で、何度聞いても何を言っているか分かりません。
しかし、重大な選択を迫られているようにしか思えないので、ここは曖昧にせず何回も聞き返します。
すると「Go home」と言っていることが分かりました。
どうやら、おじいさんはここで帰るけど、君はどっちに行くんだい?あっちには○○があって、こっちには××があるけど、どうするんだい?的なことを言っていたことが分かりました。
ということで、おじいさんはただただ距離感が近いだけの、めちゃくちゃ良い人だったというオチです。
おじいさんとは、ここでバイバイして、わたしは再度旧教会地区周辺を探索することにしました。
下手なツアーに参加するよりも、遥かに楽しく、しかも無料で、ビールまで奢ってもらうという、とても充実した時間を過ごすことが出来ました!
おじいさんには感謝ですね。
つづく…。
そう、この話には続きがあるのです。