数々の歴史小説を残しただけでなく、
数多くのエッセイも出版している司馬遼太郎の特集がNHKで放送されます。
本番組の副題となっている『この国のかたち』も、
1986年より1996年まで月間文藝文秋で連載されていたものです。
司馬氏が63歳から、急逝する72歳までの間です。
司馬遼太郎と言えば、
『竜馬がゆく』『坂の上の雲』が最も有名な作品であると思います。
『坂の上の雲』については、
わたしも気合い入れて魂込めて書いた記事があります。
『竜馬がゆく』は1962年から1966年の間、
司馬氏が39歳から43歳までの時に書かれた作品です。
『坂の上の雲』は1968年から1972年の間、
45歳から49歳までの時に書かれた作品です。
司馬作品の中で、これほどの知名度を誇る作品が、
晩年ではなく、比較的中年の時に書かれていたのです。
その司馬遼太郎が、晩年に何を考えていたのか、
自身の歴史観について書かれた本が『この国のかたち』です。
歴史を学ぶ必要性
わたしは大人になった今だからこそ、歴史を深く知る必要があると考えています。
この先、長く生きていくであろう道のりの中で、
さまざまな判断が必要となる場面があります。
誰かがこうしたらいいよと教えてくれる機会はほとんどありません。
判断のほとんどが、自分の意志で自分の責任で選ぶ必要に迫られると思います。
そういった場面で、一体何を基準に判断すればいいのか迷うことでしょう。
わたしのような凡人でなくとも、
重要な決定をする際に歴史から学んでいる偉大な方は多いです。
歴史から学んで重要な決定を下す人
一例をあげます。
孫正義の『志高く 孫正義正伝』という本に書いてあった話です。
孫さんが16歳で渡米する決断を下したのは、坂本竜馬の影響とのことです。
『竜馬がゆく』を読んで、
おのれの志を成就するために、当時では最高級に重罪である脱藩をしてでも、
成し遂げるという意志、そして実際に成し遂げる姿に自分を照らしたそうです。
孫さんは、在日朝鮮人ということで、相当な差別を受けて育ち、
在日というレッテルのせいで自由に動けない、卑屈になっているまわりの人々を見て、
「俺はこんなところで一生を終えてはならない!」と思ったそうです。
渡米の目的はITを学ぶことだったそうで、
いまのソフトバンクの礎をつくったのが『竜馬がゆく』にあると言っても過言ではないでしょう。
また稲盛和夫さんについて、『人生の王道」という本に書いてあった話を紹介します。
京セラを創業して事業が拡大していき従業員から賃上げ要求があった際に、
本当は自分が開発に打ち込みたくて創業した会社が大きくなって、自分は技術開発に打ち込みたいのに、
従業員のことまで考えなければならないことに葛藤があったそうです。
従業員を守るという選択をすると、自分のやりたいことはできなくなる。
会社が大きくなればなるほど、自分を押し殺していかねばならないと、
若き稲盛さんは悩んだそうです。
その時に、稲盛さんが拠りどころにしたのが、
『南洲翁遺訓』という西郷隆盛のことばでした。
そこには『組織の上に立つ人間には、いささかの私心も許されない』とあり、
従業員を守るために、すべてをささげる覚悟が出来たそうです。
そして、今日の京セラ・KDDI・JALの大きさを見ると、
西郷隆盛が稲盛和夫を育てたという見方も間違いではないのです。
一般人レベルの話であれば、
わたしの父親はわたしに「歴史はいいぞ、歴史を学べ」と、
何度言い聞かせていました。
当時、自分は全く歴史に興味なく、一切歴史の本なんて読みませんでした。
いま歴史について考えるようになり、
年齢を重ねて、ようやく父親の言っていたことが分かった気がします。
わたしの父親は、決して傑出した人物ではありませんが、
楽しそうに日々過ごしています。
わたしの歴史に対する考え方
「歴史は繰り返される」という言葉のとおり、
物事の大小はあれども、過去にあった出来事に似た出来事が自分の身に起きると思います。
例えば、
何か仕事でうまく行ったことがあって、そのあとに調子に乗って失敗したとしましょう。
わたしは日露戦争で大国ロシアを退け、第一次世界大戦で戦勝国となった日本が、
調子に乗った結果第二次世界大戦で取り返しのつかない大敗北を喫した出来事を思い出します。
「ああ、調子に乗ると第二次大戦の日本のようになるのか、気を付けよう」となるわけです。
『失敗の本質』『大空のサムライ』『永遠の0』
あたりを読んで思ったことです。
ここで、
「第二次大戦の敗因は調子に乗ったわけではない、欧米各国が・・・」
という議論をする必要はありません。
自分なりに、歴史を学んでどう思ったか、それをどう生かすかが大事なんじゃないかなと思うのです。
孫正義が竜馬が脱藩してでも何かを成し遂げたいと思ったくだりについて、
わたしはあまり感化されませんでしたし、
人それぞれの解釈でいいかと思います。
わたしは学者になりたいわけではなく、
単に人生を充実させたいだけですから。
歴史を知らなったがゆえに、
何か取り返しのつかない失敗をしてしまうことが嫌だから、
歴史に興味がある、そんなスタンスです。
歴史を学ぶということは、
歴史小説を読むことだけではありません。
経営者の本でもいいですし、
プロスポーツ選手の自伝でもいいと思います。
誰が言っているかは重要と思いますが、
誰かの意見の言いなりになってはいけないですし、
誰かを崇拝せよ、という話でもありません。
過去は過去で、今を生きるのは自分たちなのですから、
学んだことをどう今に生かすかは完全に自己責任です。
まとめ
自分以外の誰かの経験を、
自分自身が経験しなくても活かすことが出来るのが、
人間の最大にして最高の力だと思っています。
わたしたちはパソコンを使うことで、
便利な生活を送ることが出来ます。
こうやって何気なく目にしている文字も、
パソコンの内部では、
『00010101111010110110010』みたいな、
1と0で表現されています。
これでは人間が見ても全く意味わからないので、
人間でも見やすいように、いろんな決まりや技術を駆使して、
このように見やすく快適になっているのです。
現代のパソコンで使われている「ユークリッドの互除法」という考え方があります。
ユークリッドという人は、紀元前300年とかそんな遥か昔に活躍していた数学者です。
わたしたちは、「ユークリッドの互除法」のみならず、
ユークリッドって人のことを1ミリも知らなくてもパソコン使えます。
逆の見方をすると、ユークリッドという人は未来のパソコンを便利にするために、
数学をやっていたわけでもありません。
パソコンを作った人が、「ユークリッドの互除法使えば速くなんじゃね?」みたいな感じで、
使ったんだと思います。
ユークリッド的には、
「いやいや私は数字よりも幾何学が好きだったんで、そっち使ってくださいよ」とか思っているのかもしれませんが、
パソコン作る人からしたら、幾何学よりも互除法の方が役に立ったというだけの話です。
というように、
未来を生きる我々が、良いように過去の偉人の考えを使ってOKなんですよ。
だったら、知らなきゃ損じゃね?
というのが、わたしが最も伝えたいことです。
ブログやインターネットも同じだと思います。
HTMLとかCSSとか自分は全く分からなく、
一から勉強していたら、どれだけの時間がかかるのかと思うと、
コピペ一発でかっこいいデザインに出来るコードを公開している人たちも、
わたしからすれば十分『偉人』です。
わたしは司馬遼太郎の歴史観に触れて、考え方が大きく変わったので、
今夜・明日放送のNHKスペシャル『司馬遼太郎思索紀行 この国のかたち』には大注目です!