最終更新日:2017年10月1日
自転車が好きすぎて、流通している自転車関連本を、徹底的に読み漁った時期があります。
そんな自分が、数ある自転車本の中からイチオシのおすすめ本やマンガを紹介したいと思います。
1、『シャカリキ!』曽田正人
『め組の大吾』、『昴』など書いている、曽田正人さんによる自転車マンガです。
現在、トレック・セガフレードというプロ自転車チームのトップチームで活躍する別府史之選手は『「シャカリキ!」を読んで、プロを目指そうと思った』と語っています。
自転車版「キャプテン翼」のような位置づけの一冊です。
最大の特徴は、ひたすらに『熱い!』ことです。
自転車乗りのバイブルと言っても過言ではないでしょう。
主人公の野々村輝(テル)は、根っからの"坂バカ"です。
はた目から見れば、気が狂っているとしか思えない激坂を、凄まじい形相で嬉々として登っていく姿には、心を揺さぶられます。
ヒルクライムをしている最中の『一体自分は何のために、こんな苦しい思いをしなければならないんだ?』
という、不毛とも思えることが、実はとてつもなく楽しいことである様子が、非常にわかりやすく描かれています。
『シャカリキ!』を読んだあとにロードバイクに乗ると、巡航速度が5km/hくらい速くなる気がしますし、坂を登りたくてウズウズすることでしょう。
わたしはこれを"メンタルドーピング"と呼んでいます笑
あえて、断言します。
『シャカリキ!』は自転車乗りなら、必ず読むべき一冊です。
2、『弱虫ペダル』渡辺航
作者の渡辺航さん自身が、かなり自転車に乗り込んでいる方です。
作中での描写が、ロードバイク乗りやレース好きにとって、クスッと来るような芸の細かい表現がたまりません。
そして、何より「弱虫ペダル」の影響で、ロードバイクを始めました。
という人が非常に多くなっています。
自然と読み進めているうちに、
・ロードバイクに乗るための知識
・ロードバイクをメンテナンスするための知識
・ロードレースを見るための知識
が、補われていくように書かれています。
ロードバイクのことを知らなくても、マンガを読み進めるうちに理解できます。
単行本のあとがきでは、本編で解説しきれなかった細かい知識がたくさん解説されています。
ロードバイク初心者は、教則本とか読まずに、『弱虫ペダル』を読んでもいいのではないかと思うのです。
3、『ツール・ド・フランス 勝利の礎』ヨハン・ブリュイネール
ヨハン・ブリュイネールの名を知っている方は、かなりのサイクルロードレースファンだと思います。
この人物は、自転車ロードレース最高峰であるツール・ド・フランスにて合計9回総合優勝をもたらした監督です。
しかしながら、後に7回分はランス・アームストロングのドーピング問題により取り消されています。
ドーピングの是非については、ここでは語りません。
少なくとも、ドーピングがあろうがなかろうが、マークが厳しい中で7連覇を果たしたノウハウには、一見の価値ありです。
サイクルロードレースの監督という仕事について、詳しく言及されている本、特に日本語訳された本は貴重です。
唯一無二の一冊と言えましょう。
4、『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス永遠(とこしえ)のヒーロー』マット・ラミィ、白戸 太朗
ランス・アームストロングを発端としたドーピング問題は、サイクルロードレースシーンに陰を落としました。
信頼を失った業界では、スポンサー離れが深刻化するなど、ランスと直接関わりの無い人々へも影響を及ぼしています。
彼が表舞台から去ったのは、彼を好ましく思わない人たちによる執拗な攻撃の結果だと思っています。
なので、世の中で出回っているランス・アームストロングについて書かれた本は、称賛派もしくはアンチのどちら側が書いた本という図式になっています。
しかし、この一冊はなるべく客観的な視点で、ランス・アームストロングについて中立な立場から書かれた本です。
称賛派・アンチ・中立すべての本を読み感じたことは、「彼ほど努力した人はいないだろう」ということです。
当時のサイクルロードレース界は、ドーピングに汚染されまくっており、何もランスだけがドーピングをしていた訳ではありません。
強い選手はマークされ、マークされればされるほどに勝ちにくくなる状況で、ツール・ド・フランスという最高峰のレースを7連覇した事実は揺るぎません。
ガンで生死を彷徨った人間が、仮にドーピングしていたとしても、レースの第一線に復帰するだけでも凄まじい努力だったと思いますし、その上ツール7連覇を成し遂げるなんて奇跡としか言いようがない活躍です。
どの業界でも、頂点を極めた人に関して書かれた本は興味深く、面白いです。
5、『自転車で遠くへ行きたい』米津一成
ロードバイクの魅力を一言で表すと、
『遠くまで自力で高速に移動できる』
ことだと思います。
この『遠くまで』の感覚が、ロードバイクに乗る人と乗らない人で大きな隔たりがあります。
ロードに乗らない人にとって、自転車で遠くへ行くという感覚は、距離にしてせいぜい10~20kmくらいでしょう。
恐らくロードバイクに乗り慣れた人からすると、20~30kmは「ちょっとそのへん」というレベルで、100kmを超えると少し遠いかなと感じると思います。
しかし、この本では、そんな感覚さえも破壊するような、200km、400km、600kmという数字が当たり前のように登場します。
『ブルべ』と呼ばれる自転車競技があり、1日で200km、2~3日で400km・600kmを走り切るようなイベントが日本中で行われています。
それらのイベントにたくさん参加していくと、海外の大会にも参加できるようになり、その最高峰にして最も伝統的と言われている大会が『パリ・ブレスト・パリ』です。
フランスのパリからブレストまで往復する1,200キロのサイクリングイベントで、1891年に最初に開催され、現在でも継続されている世界最古の自転車イベントである。ブルベの最高峰とされ、多くのサイクリストの目標となっている。
(Wikipediaより)
走行距離はなんと1,200kmです。
東京から熊本まで自動車で行く距離、もしくは東京から札幌まで自動車で行く距離と等しいです。
そんな距離を制限時間80時間以内に走破するというイベントです。
さらに驚きなのは、世界最速記録が42時間26分であることです。
2日もかからずに、東京から熊本まで自力で移動できる乗り物、それがロードバイクという乗り物の真の魅力です。
6、『それでも自転車に乗り続ける7つの理由』疋田智
疋田智さんと言えば、『ツーキニスト』の言葉を生み出し、ポタリングなどする人みたいなイメージがありますが、こちらの本は自転車についてスポーツだけでなく、交通インフラとして・法律・海外の事例など様々な観点から書かれています。
何かと批判も受けやすい方ではありますが、本書を読むことで道路交通法の歴史や、現状の交通ルールの問題点を整理して理解することが出来ます。
自転車先進国であるヨーロッパの国々の事例をあげ、その上で道路や土地が狭く、坂道の多い日本で、どのように自転車を活用していくべきか提言しています。
この提言が非常に具体的で、単なる批評家に留まっていない点が肝要だと思います。
実際に、疋田さんの提言していた内容の一つである、「道路の左端に線を引いて自転車専用レーンとする」という施策を、国が推進することを検討する段階まで来ています。
7、『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』石田ゆうすけ
この著者はハンパじゃないです。
一例をあげると、
・南米を走行中に強盗に襲われ身ぐるみはがされる
・世界一周旅行中に、南米最高峰アコンカグア登頂、アフリカ最高峰キリマンジャロ登頂
・アフリカ走行中にマラリアに感染するも、ビザの都合上間に合わないので走りながら治す
・チベットを自転車で越えようとして、凍死しかける
というように、普通じゃない経験をこれでもかとしています。
文章が面白いのでサクサクと読み進められます。
自転車一台には無限の可能性があることを、教えてくれる一冊です。
8、『さぬきうどんサイクリング 国井律子が3泊4日でさぬきうどんを食べ漕ぎ!』国井律子
ロードバイクの魅力を一言で表すと、『遠くまで自力で高速に移動できる』と先ほど述べました。
これにもう一言足すと、『遠くまで自力で高速に移動できて運動になる』ということです。
わたしはうどんが大好きなので、本場・香川の讃岐うどん屋を自転車で巡ったら、
食べて、運動して、お腹空いて、食べて、運動して、お腹空いて・・・
と無限にうどんが食べられる!と思って、将来やりたいことの一つにしていました。
と思ったら、すでにやっている人がいました。
それがこの本です。
ただの讃岐うどんガイドブックでなく、自転車で移動して食べ回るという要素が加わることで、本になる、コンテンツになるということも、自転車の魅力の一つだと改めて思った一冊です。
9、『人生の目標を決めたら諦めない』浅田顕
エキップアサダというチームを立ち上げ、現在は自転車日本代表監督を務める浅田顕さんの自伝です。
エキップアサダは、
自転車選手なら、誰もがあこがれる世界最高峰の自転車レース、『ツール・ド・フランス」。
その舞台へ挑む日本のチーム、それが『エキップアサダ』です。
選ばれし者しか走る事の出来ないこのレース。
いつか必ず出場するという夢を胸に、私たちは今チャレンジしています。道のりは長く険しいですが、一歩一歩、しかし確実に進み続けています。
そう、遥かなるシャンゼリゼを目指して。
(『エキップアサダ』チームプロフィールより)
というチームです。
現時点では、ツール出場という夢は実現していませんが、過去に所属していた選手では、新城幸也がヨーロッパのチームに移籍後、ツール出場を果たしています。
自転車チームを立ち上げるということ、特にスポンサー獲得をすること、活動資金を確保することが、いかに大変であるかリアルに描かれています。
自転車チームを立ち上げた人が書いている本は、わたしの知る限りではこの一冊です。
自費出版のためか、Amazonなどには流通していません。
興味ある方は、以下のリンクから注文してみてください。
Information:おすすめBOOKS 「諦めない」 - TONTON club
10、『敗北のない競技』土井雪広
現役自転車選手である、土井雪広選手によるサイクルロードレースについて書かれた本です。
スキル・シマノというヨーロッパのチームに所属し、グランツールの一つであるブエルタ・ア・エスパーニャを、日本人として初めて完走した実績を持っています。
レース中、カメラが映していないところで、選手たちはどんな会話をしているのか。
アシストと呼ばれる選手たちが、どんな準備をしているのか。
レース中にどう動いているのか、など詳細に書かれています。
自転車ロードレースは、エース選手の力だけで勝つことは難しく、アシストの存在が非常に重要です。
そのアシストについて、現役選手が書いた貴重な一冊です。
あとがき
一部マニアックなチョイスとなりましたが、数ある書籍の中から魂心の10冊を選びました。
自信をもってオススメ出来る10冊です。
文中でも書きましたが、自転車は
『遠くまで自力で高速に移動できて運動になる』
という点に、無限の可能性があります。
・満員電車に乗りたくない
・とにかく速く移動したい
・運動不足気味だ
・スリムなボディが欲しい
・メカいじりが好きだ
・人と競うことが好きだ
・自分を追い込みたい
・綺麗な景色を見たい
・美味しいごはんが食べたい
・地球環境が気になる
など、さまざまなニーズを満たすことが出来る乗り物です。
自転車の無限の可能性が少しでも伝わればと思い書きました。