今年限りでチーム解散が決まっているIAMサイクリングのヤルリンソン・パンタノがとてつもないスピードのダウンヒルで先頭に追いつき、見事なステージ勝利をあげました。
最初の1級山岳まではハイペースで進む
↑スタートの瞬間、先頭にいる選手たち
チームスカイがいつもどおり、レースコントロールすると思いきや、好きに逃げを打たせる展開となりました。
しかし、逃げたいチーム同士がアタックに次ぐアタックを仕掛けた結果、集団のスピードが上がってしまい、なかなか逃げが決まりません。
決定的な逃げが生まれないまま、最初の1級山岳の登りに突入します。
ここで、山岳賞ジャージを狙ってラファル・マイカ(ティンコフ)が先行します。
マイカを追って、集団からも逃げたい選手が続々とペースアップした結果、まとまった逃げ集団が形成されました。
マイカが、1級山岳を先頭で通過しました。
山頂を越えた下り坂で、追走の選手が追いつき、30名の逃げが決まりました。
メンバーは、
ヨン・イサギーレ(モビスター)
→ダウンヒルのスペシャリスト。前待ちしながら、後半の下りでキンタナをアシスト狙い
ネルソン・オリヴェイラ(モビスター)
→同じくTTスペシャリストの脚質なので、後半の下り坂でのアシスト狙いか
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
タネル・カンゲルト(アスタナ)
ラファル・マイカ(ティンコフ)
→山岳賞狙い
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(AG2R)
アレクシ・ヴィエルモーズ(AG2R)
ジョージ・ベネット(ロットNLユンボ)
アイマル・スベルディア(トレック・セガフレード)
ステフ・クレメント(IAMサイクリング)
ジェローム・コッペル(IAMサイクリング)
ヤルリンソン・パンタノ(IAMサイクリング)
ピエール・ロラン(キャノンデール・ドラパック)
トムイェルテ・スラフテル(キャノンデール・ドラパック)
ディラン・ファンバールレ(キャノンデール・ドラパック)
セルジュ・パウエルス(ディメンションデータ)
トム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)
→山岳賞、ステージ優勝狙いか
スティーブ・モラビート(FDJ)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(FDJ)
バルトス・フザルスキー(ボーラ・アルゴン18)
アルベルト・ロサダ(カチューシャ)
イルヌール・ザッカリン(カチューシャ)
→エース級の選手、ステージ優勝狙い
クリスチャン・デュラセック(ランプレ・メリダ)
ツガブ・グルメイ(ランプレ・メリダ)
ルカ・ピベルニク(ランプレ・メリダ)
ロメン・シカール(ディレクトエネルジー)
トマ・ヴォクレール(ディレクトエネルジー)
ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)
→エース級の選手、ステージ優勝狙い
ダニエル・ナバーロ(コフィディス)
ルーベン・プラサ(オリカ・バイクエクスチェンジ)
です。
マイヨ・アポワルージュを着用しているトーマス・デヘント(ロット・ソウダル)は逃げに乗ることが出来ませんでした。
↑雄大なモンブランの山々。この後のスイスアルプスステージで、近くを通る。
超級山岳グラン・コロンビエールの手前で、ドゥムランがアタック
残り70km地点、超級山岳グラン・コロンビエールの手前のかてごりーのない山岳の登りで、まずファンバールレが仕掛けました。
そのファンバールレを追って、逃げ集団からドゥムランがアタックします。
あっという間にファンバールレに追いつくと、ダンシングしながら本気のアタックをしてファンバールレや逃げ集団を引き離しにかかります。
ドゥムランは、残り70km近くを一人旅で逃げ切るつもりでのアタックでしょう。
逃げ集団からは、ニーバリがアタックし、この動きにポッツォヴィーヴォとパンタノがジョイントして、グラン・コロンビエールの登りが始まる前に、ドゥムランを追いつきました。
追走集団に12秒差をつけて、グラン・コロンビエールの登りへ突入しました。
ところが、淡々と距離を詰めてきた追走集団に追いつかれます。
ナバーロが飛び出しを狙ってアタックを仕掛けると、集団のペースが上がります。
ハイペースについていけない選手が脱落するなか、先ほどアタックしていたニーバリとドゥムランも脱落してしまいました。
人数が絞られた逃げ集団から、マイカとザッカリンが先行
度重なるペースアップで、逃げ集団は3つ4つのグループに分裂します。
その中で、マイカとザッカリンがハイペースで先行しました。
マイカは山岳賞のポイント狙い、ザッカリンはステージ優勝を狙って、協調しながらリードを築いていきます。
マイカが超級山岳を先頭通過して、大きく山岳ポイントを稼ぎました。
2人を追って、アラフィリップとパンタノが追走集団から飛び出して、頂上を越えた後の下り坂で追いつきます。
ところが、アラフィリップはメカトラで遅れてしまい、ザッカリンは千切れてしまいました。
パンタノとマイカの2人が先頭を走っています。パンタノのダウンヒルは素晴らしいですが、マイカも非常に上手に下って行っているようです。
マイヨ・ジョーヌ集団では、アスタナが牽引開始
グラン・コロンビエールの登りで、アスタナのアシスト陣が先頭に立って、ペースアップしていきます。
この動きで、メイン集団から千切れる選手が続出し、20名ほどにまで人数を減らします。
スカイのアシスト陣では、ゲラント・トーマスとセルジオ・エナオモントーヤが千切れてしまったようです。
2度目のグラン・コロンビエールの登りで、マイカがパンタノを千切るが、下りで追いつく
マイカも、パンタノもキツそうな表情を浮かべながらも、圧倒的な登坂力を持つマイカがパンタノを引き離します。
1級山岳を先頭通過して、パンタノに30秒の差をつけます。
下りに強いパンタノを引き離すために、マイカは下りを飛ばして行きますが、途中コースアウトして、あわや落車しかけます。
それ以上に素晴らしいダウンヒルを見せたのは、パンタノです。カメラバイクが追いつかないほどの、凄まじいスピードで、30秒の差をあっという間に詰めて、マイカに追いつきます。
さらに二人の後方では、ヴィエルモーズとライヒェンバッハが20秒差ほどで追いかけています。
マイカとパンタノが、牽制も少し入れながらもローテーションを回して、残り1kmを切ります。
ヴィエルモーズとライヒェンバッハも追い上げてきて、先頭の2人が後ろを振り返ると見える位置まで来ました。
しかし、わずかに2人には届かなそうです。
残り250mあたりで、マイカがスプリントを開始します。良いタイミングで仕掛けたマイカに対して、パンタノは一瞬反応が遅れます。
残り100mあたりで、パンタノのスピードがぐんぐん伸びてきて、ついにマイカを捉えます!
そのままマイカをかわして、パンタノがゴール!
解散の決まっているチームに華を添える、見事な勝利をあげました!
ヴィエルモーズとライヒェンバッハは、惜しくも4秒届きませんでした。
アラフィリップは、最後までしっかり脚を残していたようで、悔しすぎるステージとなりました。メカトラさえなければ、誰よりも速くダウンヒルを下っていた選手です。
Alaphilppe hit the top descent speed from Grand Colombier of 98.5km/h - 8km before he crashed, and 40.7km from the finish line. #TDFdata
— letourdata (@letourdata) 2016年7月17日
超級山岳グラン・コロンビエールの下りでは、時速98.5キロ出していたそうです。
アラフィリップは悔しさのあまり、レース後は泣いていたそうです。
一方メイン集団では、アルとバルベルデがアタックするも不発に終わる
メイン集団からは、ファビオ・アル(アスタナ)がアタックしました!
アルを追って、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)がアタックします。
スカイのアシストのワウト・ポエルスが淡々とペースを刻みながら登って、二人を吸収します。
↑超級山岳グラン・コロンビエールの登りは、つづら折りの坂を登っていく
BMCレーシングのリッチー・ポートとティージェイ・ヴァンガーデレンや、モビスターのナイロ・キンタナは、アタックする素振りも見せません。
アタックしないのか、アタック出来ないようなペースでスカイのアシストがコントロールしているのか。わたしは、後者のように見えました。
ロメン・バルデ(AG2R)がアタックするシーンも見られましたが、決定的な動きとはならず、フルームはライバルたちと同タイムでフィニッシュしました。
パンタノは自身初となるグランツールでの勝利、マイカは山岳書&敢闘賞獲得
パンタノにとっては、初めてのグランツールでの勝利です。
素晴らしいダウンヒルを見せていたので、チーム解散後の再就職先にも困らないことでしょう。素晴らしいアピールにもなりました。
フルームは何となく、おつかれ感のある表情を浮かべていました。
マイカは狙い通りにマイヨ・アポワルージュを獲得しました。
2位のデヘントには37ポイント差をつけています。
アダム・イェーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)は、メイン集団と同タイムでゴールはしましたが、常に集団後方に位置取りしていました。(ちょっとキツかった?)
いつもの笑顔も、なんとなく疲れているようにも見えます。
あきさね的チェックポイント
スカイのアシストを削りとったアスタナの攻撃
超級山岳グラン・コロンビエールの登りで、アスタナがペースアップを計りました。
この時に、いつもなら登りの最後までフルームのそばに、しっかりとついているゲラント・トーマスとセルジオ・エナオモントーヤが遅れたことが気になりました。
平坦アシストのイアン・スタナード、ルーク・ロウも落車で怪我を負いましたし、ヴァシル・キリエンカも連日のハードワークです。
ミケル・ニエベは最後のダウンヒルで落車していました。ミケル・ランダは今日は行方不明でした。
このように鉄壁のスカイアシスト陣も、疲れが溜まっているのかもしれません。
その分、ポエルスが完璧すぎるアシストでフルームをフォローしてはいましたが、スイスアルプスでの連戦で、スカイのアシスト陣にほころびが生まれる可能性もあるかもしれないと思いました。
アラフィリップが悔しすぎるメカトラ
パンタノのダウンヒルが目立ったステージでしたが、アラフィリップがメカトラでストップするまでは、どうやらアラフィリップ単独で先行していたようです。
それくらい、ハイスピードなダウンヒルをこなしつつ、最後は余力を見せるくらいの脚力があったということです。
今日に似たステージ構成は第20ステージにあります。
個人的にも非常に応援・注目しているライダーですので、またの活躍を期待しています。
明日の第16ステージは、登りスプリント勝負か
スイスに入って、首都ベルンへとゴールするステージです。
基本的には平坦ステージとなっています。
ゴール前に平均勾配7%の250mの坂と、平均勾配6.5%の600mの坂が登場します。
短いながらも、簡単ではない登り坂を経てからのスプリント勝負となります。
個人的には、絶好調のマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)の5勝目を期待したいところですが、身軽な身体を活かして登りをこなしたブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)の、今大会初のフランス人によるステージ優勝を予想したいと思います!
明日第15ステージは、スカパー・J Sportsで20:55からレーススタートから中継開始予定です。実況は永田実さん、解説は狩野智也さん、ゲストは弱虫ペダル著者の渡辺航さんです。
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