プロの自転車選手の身体能力は一般人の理解を越えています。
ツール・ド・フランスでは、23日間(うち2日は休養日)にわたって、合計3500km弱を走ります。
中には個人タイムトライアルなどで、1日10〜50kmくらいの日もありますが、平均すると1日200km前後の距離をほぼ毎日走るというとんでもないことをしている人たちです。
フルマラソンを毎日走るようなものです。
そのため、自転車選手の身体は特別に仕上がっています。そんなプロ自転車選手の凄さについて解説します。
1日の消費カロリーがとんでもない!
1回のレースで6000〜7000Kcal消費すると言われています。
こちらは、ジロ・デ・イタリア 第14ステージでマリアローザを獲得したステーフェン・クライスヴァイク選手の実走データです。
207.7 km Ride Activity on May 21, 2016 by Steven K. on Strava
14ステージは獲得標高差5400mという、とんでもなく厳しいステージです。
序盤・中盤までは他のチームが先頭集団をコントロールしていたため、クライスヴァイクは集団で力を貯めていた、つまりエネルギーを節約しながら走っていたと想像出来ます。
↑ステーフェン・クライスヴァイク選手。脚質はTTにも強いオールラウンダー。オランダ人。
後半の2級山岳から、リーダージャージ争い・ステージ争いは本格化し、全開で走行していたことでしょう。
そうして、1日で消費したカロリーが6001Kcalです。
人間が体内に貯蔵できるカロリーは最大で2000〜2500Kcal程度と言われています。
足りない3500〜4000Kcalはレース中に補給食を食べることで補っています。
こういうエナジージェルや、
エナジーバーなどをジャージのポケットに入れて都度都度補給しています。
他には、バナナや、ライスケーキや、高カロリーなジャムを塗りこんだビスケットなど、とにかくコンパクトで高カロリーで、すぐエネルギーになるものを食べながら走るのです。
胃腸がものすごく強靭!
毎日へとへとになるくらい激しい運動をしながら、6000〜7000Kcalほどの食料を食べることになります。
大量の食べ物を消化できる強靭な胃腸がないと、これほどの負荷に耐えることが出来ません。
結果的に自転車選手は胃腸がものすごく強いです。
逆に言えば、胃腸に何かしらトラブルがあると、翌日のレースはほとんど走ることが出来ません。最悪リタイヤです。
意味わからないくらい速い!マリアローザの登りとダウンヒルに愕然!
先ほどのクライスヴァイク選手のデータを再び見てみます。
207.7 km Ride Activity on May 21, 2016 by Steven K. on Strava
序盤の平地では、平均時速57キロ出ています。レース序盤はアタック合戦が始まり、アタックが落ち着くまでは時速50キロくらいは当たり前に出ます。
本格的な戦いの始まったラストの2級山岳では、平均勾配6〜7%の斜面を平均時速24キロで駆け抜けています。ここまで4000m以上坂を登って来て、10km弱はあろうかという長い坂道を時速24キロで走り続けているのです。わたしなら万全の状態で勾配6〜7%の斜面を時速24キロのスピードで走っても、1分持たない気がします。
山岳を越えた後の下り坂では、平均時速65キロも出ています。MAXスピードは時速92キロです!下り坂に強い選手は最速時速120キロに達するほどです。幹線道路の下り坂などで、時速60キロくらいは結構出ちゃいますが、相当に怖いです。時速90キロオーバーとかあり得ないですので、決して真似しない方がいいでしょう。
一般人の理解を越えた速さで、レースは展開されていくのです。
心肺機能が恐ろしいほど強い!山本元喜選手の起床時心拍数が低すぎ!
唯一の日本人選手として、ジロを走った山本元喜選手のブログに起床時心拍数が載っています。
第14ステージの起床時心拍は44回/分です。成人男性の通常時の平均心拍数が65〜75回/分ですので、いかに低いかが分かります。ちなみに、わたしは先ほど計測したら72回/分ありました。
ただ、もっと低い選手は起床時心拍35回/分とか記録するそうです。
自転車選手もマラソンランナーのように、長時間心肺機能が働くようにトレーニングしているので、通常時の心拍数は非常に低くなるそうです。
回復力が尋常ではないほど早い!新城幸也選手の回復力に驚嘆!
ツアー・オブ・ジャパンに参戦中の新城幸也選手。2016年2月12日のレース中に大腿骨骨折という大怪我を負いました。
http://cyclist.sanspo.com/232442
手術後、リハビリを開始して、術後67日目には自転車に乗ってトレーニングを行っているほどに回復しています。ただし、この時点ではまだ骨はくっついていなかったそうです笑
新城幸也が復帰へ第一歩!盟友土井とロードトレーニング再開 | 自転車動画シクロチャンネル CYCLOCHANNEL
そして、ツアー・オブ・ジャパン第5ステージでは、スプリント勝負でステージ5位に食い込むほどの復活を遂げました。術後111日目のことです。4ヶ月経っていません。
50kmを逃げた内間康平は勝利にあと一歩届かず 新城幸也がスプリントで5位 - ツアー・オブ・ジャパン2016第5ステージ南信州 | cyclowired
そして、第7ステージで何とステージ優勝を果たしました!新城選手自身、2007年以来のツアー・オブ・ジャパンの勝利です。
なおツアー・オブ・ジャパンは決してレベルの低い大会ではありません。毎年海外勢・外国人選手が猛威を奮っていて、日本人選手の勝利は2013年の西谷泰治選手以来3年ぶりのことです。
地元開催だからと言って、日本人が簡単に勝てるほど甘い大会ではないです!その中で、しっかり勝ち切った新城選手は素晴らしいですし、何より数カ月前まで大怪我を負っていた人とは思えない回復ぶりです。
ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージで新城幸也が優勝 - ツアー・オブ・ジャパン2016第7ステージ伊豆 速報 | cyclowired
サイクルロードレースでは、鎖骨骨折など日常茶飯事です。鎖骨骨折程度なら、1ヶ月で復帰しちゃいます。
http://cyclist.sanspo.com/180792
先ほど紹介したクライスヴァイク選手は、最終的に肋骨を折りながらもジロ・デ・イタリア完走を果たしています。この場合は痛みに強いと言った方が正しいかもしれませんが。
肋骨にヒビを負ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)がウォーミングアップ | cyclowired
そもそも標高差5400m登るような激しいレースの翌日にもレースがありますし、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどは合計21日間で3000〜4000km走行するような厳しいレースです。
1日の疲れを翌日に極力持ち越さないように鍛え上げられたプロ自転車選手の回復力は凄まじいものがあります。
まとめ
我々素人にとっては、ここまでの能力は必要としていません。
ただ自転車に乗ることで、たくさんカロリーが消費できて、心肺機能鍛えられて、何だか疲れが溜まりづらくなることは十分可能です。
プロになると、並大抵ではない身体能力を手にしています。
そんな身体能力に注目しながらレース観戦するのも面白いかと思います。
サイクルロードレースはJ SPORTSにて放送しています。スカパーは手軽な視聴手段です。
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