わたしの父は、大の蕎麦好きでした。
父は蕎麦には並々ならぬこだわりがあり、自家用車を買い換える際も、カーナビに「うまい蕎麦屋」の検索機能が充実しているかどうかを購入の判断材料していたくらいです。*1
わたしが小学生くらいの頃は、遠出すると必ず蕎麦屋さんに行ってました。
父が運転してくれるおかげで、遠くに出掛けることが出来るので、父が好きな蕎麦がいいと思いましたし、わたしは乗り物酔いが酷かったので、消化に良さそうな(油っぽくない)蕎麦は、好きな食べ物となりました。
そのため、外出してラーメンを食べるという機会は、全くありませんでした。
わたしが小学生高学年になる頃には、弟も大きくなり、母はパートで家を空ける日が増えるようになりました。
母が仕事に出ている長期休暇の平日には、昼ごはんにカップ麺を食べる機会が増えます。
その時、最も美味しいと思ったカップラーメンが、いわゆる『中華そば』と呼ばれるシンプルな醤油ラーメンです。
わたしのブログタイトルの由来にもなっている、荻窪の街で生まれ育ちました。
荻窪には『荻窪ラーメン』と呼ばれる、日本を代表する『中華そば』の老舗が何店舗もあります。
春木屋、春木家、丸長、丸福、丸信、などなど。
カップ麺でなく、本物の『荻窪ラーメン』を食べてみたい、という想いを持っていて、中学生の頃にようやく実現しました。
その時、訪れた店が今は無き『丸福』です。*2
初めて食べた『荻窪ラーメン』のお味は、それはそれは「うまい!」と思いまいた。
以来、わたしの好きなラーメンは『荻窪ラーメン』ですと、社会人になるくらいまで、そう言っていた気がします。
さて、わたしが懇意にしているnepinepi (id:nepinepikun)さんの『http://www.freiheit.co/entry/2016/09/16/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E3%81%9D%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%82%81%E3%82%93%E3%81%AA%E3%82%88%EF%BC%9F』という記事を読みました。
確かに最近のイケてるラーメン共はうめえよ。確かにうめえ。だけど、うまさの浸透圧みたいなのが高すぎるんだよ。その点、中華そばはうまさが細胞に染みこんでくるんだ… 俺はガキの頃からシンプルな中華そばが好きだった…この味で育ったと言ってもいい…
中華そばなめんなよ? - Freiheit
わかります。わかりますよ。
ということで、『中華そば』を食べるため、どうせなら昔の味をたどりたくなり、荻窪に訪れてみました。
思い出の『丸福』はもう存在しないので、北口ロータリーの東側のアーケード街にある、もう一つの『丸福』という名の店に行ってきました。
もう一つの『丸福』
のれんを右手で少し持ち上げながら、くぐって入店します。
白髪を生やした優しそうな店主さんと、若い女性の店員さんの二人で切り盛りしています。
食券機などという、ハイカラなものは無く、壁に掲げられたメニュー表を見ながら、直接オーダーします。
今回は「中華そば 大盛り」を注文しました。
お冷やを見つめながら、どんぶりの到着を待ちます。
『中華そば』の到着
チャーシュー、メンマ、ネギ、もやし、そぼろ肉がトッピングされています。
チャーシューのアップ画像。
麺はストレートな中細麺です。
スープは見事に透明な醤油色です。
そぼろ肉が乗っていることが、若干珍しいとはいえ、シンプルなザ・醤油ラーメンという見た目です。
パンチ力は弱い、だが強いパンチだけでは人は倒せない
再びnepiさんの記事から引用します。
二郎だ魚介何とかだ、店内には〇〇産の〇〇を〇〇したこだわりのスープ!!麺は〇〇産の〇〇を〇〇した◯加水ストレートなんとか麺!!と言った能書きがたくさん貼り付けられている。ああn? 正直言ってうまいけど、そういうラーメン屋が好きになれない。ラーメンなんざそこそこ、うまいくらいがちょうどいい。 「うめえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 より 「ああ…おいしいな…」 くらいがちょうどいいんだ。わかります?
中華そばなめんなよ? - Freiheit
ラーメン二郎や、濃厚魚介スープや、こってり味噌などのラーメンは、一口食べた瞬間に脳髄に電撃が走るような衝撃を受けるのですが、『丸福の中華そば』には、「ほう…なるほどね」という感じです。
繰り出される左ジャブは効果的にヒットしますが、このパンチ力では、わたしを倒すことは出来ません。
ちなみに、先日食べた「濃厚魚介つけ麺」の有名店で抱いた率直な感想は、「うまいけど『分かったよ』という味」です。
ひたすら右ストレートを打ち込むだけでは、軌道も読めてしまい新鮮味に欠けます。
その点、ラーメン二郎はメガトンパンチという人外の必殺ブローをかましてきます。文字通りKOされることもあれば、日常生活では決して味わうことの出来ない破壊力に脳天を貫かれ、麻薬のような中毒性を堪能することになります。これがたまらないのです。
では、ジャブは雑魚で、右ストレートは慣れれば余裕で、メガトンパンチが最強なのか?
そうではないですよね。
わたしは、組み合わせが大事だと思います。
より正確に言うと、その人のファイティングスタイル次第だなと思います。
兎に角、破壊力を求める人は『ラーメン二郎』を中心に行くでしょうし、小技を効かせて戦いたい人は『中華そば』や『塩ラーメン』を好むでしょう。
わたしは、オールラウンダーを目指しつつも、圧倒的な破壊力が忘れられない、フィジカルの弱いファイターです。
『ラーメン二郎』という最強のトレーニングを積みつつ、ジャブやストレートも磨きたいと思います。
そんなことを考えているうちに、気付いたらスープ完飲していました。
ジャブの効果的な一打を重ねたスープは、お店を出たあともしばらくの間、わたしの身体の中に余韻を残していました。
ジャブの一打ではKO勝利は望めませんが、あの日初めて食らったジャブの威力は忘れません。
郷愁を感じる一杯を、ごちそうさまでした。
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こちらも荻窪ラーメンの老舗、というか超有名店です。
荻窪ラーメンに分類していいのか定かではありませんが、非常に美味しかったです。
ラーメン二郎の中で、最も訪問頻度の多い店は、この荻窪店です。
わたしが二郎デビューした地にして、異国の地に旅立つ前に食べた店であり、帰国後に真っ先に向かった店でもあります。
やっぱりラーメン二郎は最高ですが、たまにはシンプルなラーメンを食べながら楽しみたいと思います。