序盤から逃げ続け、ラスト20kmを独走したスティーブ・カミングス(ディメンションデータ)が2年連続のステージ優勝をあげました。
マイヨ・ジョーヌのフレフ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)は、2位以下とのタイム差を広げることに成功しています。
※追記あり レース後に救済措置のため総合順位に変動がありました。
序盤からアタック合戦が続いた模様
山岳ステージではありますが、中間スプリントまでにあるカテゴリー山岳は4級山岳一つのみです。
ということもあって、ペーター・サガン(ティンコフ)が逃げに乗ろうとしたため、グリーンジャージをキープするためにマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)がアタックを仕掛けたと思われます。
結局、サガンは逃げに乗ることを諦めたので、カヴェンディッシュも逃げに乗らなかった様子です。
そうして、1時間近くアタック合戦をしたあげく、29名の大所帯の逃げグループが形成されました。
この逃げ集団には、
ヴァシル・キリエンカ(チームスカイ)
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
アレクセイ・ルトセンコ(アスタナ)
ゴルカ・イサギーレ(モビスター)
フレフ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)
というファンタスティック4+BMCの総合上位狙いのチームは、ティンコフ以外選手を送り込んでいます。
注目はニーバリです!
ダウンヒルの技術はトップクラスなので、1級山岳を越えて長いダウンヒルを使って逃げ切り勝利という展開も十分にあり得ます。
キリエンカもダウンヒル技術は十分持っていますので、クリス・フルームが1級山岳でライバルたちに攻撃を仕掛け、先行していたキリエンカがフルームを牽いて一気にゴールを目指す作戦もありそうです。
イサギーレも同じくですね。ダウンヒラーとしてのアシストが考えられます。
マイヨ・ジョーヌのヴァンアーヴェルマートがジョインしている逃げを集団が容認したことが意外です。ここで山を登れることを証明出来た場合、他の総合チームがさすがに焦ると思うので面白そうです!
他の有力選手は、
- スティーブ・カミングス(ディメンションデータ)
→逃げ切り勝利は得意パターン
- ヤスパー・ストゥイフェン(トレック・セガフレード)
→山岳賞ジャージ奪還を狙うか
- ファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)
→本気で逃げ集団を牽き始めたら、メイン集団もなかなか追いつけない
- トニ・マルティン(エティックス・クイックステップ)
→カンチェと同じく、ある程度の登りでの牽引も可能
- シルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)
→フランス屈指のアタッカー、今大会初の逃げに乗る
- アレクシス・ヴィエルモーズ(AG2R)
→登坂力は十分、昨年のツール第8ステージで勝利、ヴァンアーヴェルマートの次に総合タイムが良い
その他は、
ヤン・バケランツ(AG2R)
ポール・マルテンス(ロットNLユンボ)
オリバー・ナーセン(IAMサイクリング)
マッティ・ブレシェル(キャノンデール・ドラパック)
アレックス・ハウズ(キャノンデール・ドラパック)
セバスティアン・ラングフェルト(キャノンデール・ドラパック)
サイモン・ゲシュケ(ジャイアント・アルペシン)
ポール・ヴォス(ボーラ・アルゴン18)
アンヘル・ビシオソ(カチューシャ)
クリスチャン・デュラセック(ランプレ・メリダ)
ツガブ・グルメイ(ランプレ・メリダ)
ユルゲン・ルーランズ(ロット・ソウダル)
アントワーヌ・デュシェーヌ(ディレクトエネルジー)
ダニエル・ナバーロ(コフィディス)
ボルト・ボジッチ(コフィディス)
ルイスアンヘル・マテ(コフィディス)
ダリル・インピー(オリカ・バイクエクスチェンジ)
ピエールリュック・ペリション(フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト)
という計29名による逃げです。
ティンコフと、FDJ以外の20チームは選手を送り込んでいます。
ここでレースはしばらく落ち着きます。
メイン集団は、モビスターとスカイが中心となって、コントロールしているようでした。逃げ集団に選手を送り込んでいないティンコフは集団牽引には協力していないようです。
4級山岳通過後に、逃げ集団に動きが
ニーバリが軽くアタックをして、4級山岳を先頭通過したことをキッカケに、逃げ集団からアタックがかかります。
カミングスを含む4名の先頭集団を、ヴァンアーヴェルマート、ニーバリを含む6名の追走集団が追いかけ、キリエンカ、イサギーレ、カンチェラーラ、トニ・マルティンなど残りの選手がいる追走集団その2という情勢になりました。
中間スプリント地点が近づくと、先頭集団からカミングスがアタック!
そのままカミングスが中間スプリントに先着しました。
先頭集団3名に、追走集団6名が追いついて、9名となりました。
いよいよ1級山岳アスパン峠の登りに突入
カミングスが単独で登り始めます。
追走集団からは、ブレシェル、ルトセンコらが遅れ、ニーバリ、インピー、ナバーロ、そしてヴァンアーヴェルマートが、カミングスを追いかけます。
しかし、途中でヴァンアーヴェルマートも遅れ出し、一人で登っていきます。
ここで遅れたとしても、マイペースで逃げ切ることが出来れば十分なので、ニーバリたちに必死に食らいつくことが目的ではなさそうです。
7%の勾配を、時速22キロ前後で走行しているので、それほど悪いペースではなさそうです。
Van Avermaet is dropped from the Nibali group. He's now alone, travelling at 22km/h on a 7% gradient. #TDFdata https://t.co/iiotjDFdcq
— letourdata (@letourdata) 2016年7月8日
先頭のカミングスは追走集団とのタイム差を広げる好走を見せています。
メイン集団でも動きが起きる!
逃げ集団に選手を送り込んでいないティボー・ピノ擁するFDJが集団牽引を開始します。
すると、マイヨ・ブラン候補のワレン・バルギル(ジャイアント・アルペシン)がアタックをしかけます。
このアタックは不発に終わりますが、総合争いに動きが見られそうな予感がしました。
その後、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(AG2R)がアタックしました。アシスト選手のアタックなので、総合勢はこれを見送り、ポッツォヴィーヴォは先行します。
山頂が近づく中で、追走集団からナバーロがアタック
カミングスは相変わらず、追走集団に1分程度の差をつけながら良いペースで登っていきます。
山頂が近づくなかで、追走集団からナバーロがアタックします!インピーは反応しますが、ニーバリは反応できません。
反応できなかったのか、反応しなかったのかは不明ですが、静かにマイペースに登って行きます。
一方、メイン集団からジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)がアタックしました!
しかし、スカイの強力山岳アシスト陣がペースをあげて、アラフィリップと先行していたポッツォヴィーヴォの両名を吸収します。
この動きの中で、ティボー・ピノ(FDJ)が遅れてしまいます!
ピノはJ Sportsの解説を務める栗村修さんが総合優勝に予想していた選手です。まさにクリノート炸裂です笑*1
山岳初日にティボー・ピノ遅れるとか、クリノート炸裂じゃないですかwww
— Akisane Yuu (@saneyuu) 2016年7月8日
※クリノートとは
栗村修さんがイチオシするライダーに、パンク・落車・体調不良など次々と良くないことが起きることから、デスノートにあやかってクリノートと名付けられた。
ピノは栗村さんが優勝と予想していた選手。
メイン集団が山頂に到達するやいなや、ダン・マーティン(エティックス・クイックステップ)がアタックします!
アダム・イェーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)が反応し、ものすごい勢いでダウンヒルをこなしていきます。
一気にメイン集団を引き離し、単独で逃げて行きます。
カミングスが逃げ切り勝利!ヴァンアーヴェルマートはリードを広げる
先頭では、カミングスのペースが全く落ちないままフィニッシュ!
昨年のツールに引き続き2年連続のステージ優勝となりました。
続いて、インピーとダニエル・ナバーロがゴール。
少し遅れてニーバリ。そしてヴァンアーヴェルマートがゴールします。
ヴァンアーヴェルマートは結果的に、山岳ステージで2位以下との総合タイム差を広げることに成功しました。
フラムルージュが落下して、アダム・イェーツが激突する悲劇が
残り1kmを示すフラムルージュが、道路上に落ちてしまっていて、どうやらそこに勢いよく逃げいてたアダム・イェーツが激突してしまった模様です。
そのまま逃げ切っていれば、マイヨ・ブランが獲得出来た可能性が高かっただけに非常にかわいそうです。
その他の総合勢も足止めを食らってしまい、結果的にヴァンアーヴェルマートとのタイム差が予定以上に広がった模様です。
※追記
レース後に、オリカ・バイクエクスチェンジがコミッセールに抗議の結果、救済措置が取られることになりました。
残り3km地点でのタイム差を、ゴールタイムに反映させることになりました。
アダム・イェーツはメイン集団に7秒差をつけていて、ヴァンアーヴェルマートからメイン集団は45秒遅れていました。
この結果、アダム・イェーツは総合2位に浮上。マイヨ・ブランもアラフィリップから奪還する結果になりました。
※
総合勢ではピノ以外の選手たちは同タイムでゴールしました。
ナイロ・キンタナ(モビスター)とクリス・フルーム(チームスカイ)が何やら談笑しながらフィニッシュラインに向かっています。
フルームがキンタナの肩に手を回しながら喋る場面も見られて、何を話しているのか非常に気になります。
何だかんだでデヘントは山岳賞キープ、ニーバリ敢闘賞!
カミングスは昨年に引き続きのステージ優勝を果たしました。
ディメンションデータはここまで7ステージ中4勝という好成績です。
ヴァンアーヴェルマートは、マイヨ・ジョーヌを維持するどころか、予想外にタイム差を広げる結果となりました。
山岳賞ジャージはヴァンアーヴェルマートが13ptsでデヘントに並んだため、奪還と思いきや、デヘントがキープ出来ました。
マイヨ・ヴェールもカヴェンディッシュがキープしています。
そして、ニーバリが敢闘賞を獲得しました。
第8ステージは今大会初の超級山岳が登場!
レース序盤から、超級山岳トゥールマレー峠への登りが始まります。
その後も2級山岳・1級山岳・1級山岳とヘビーな山が続きます。
最後の1級山岳ペイルスールド峠を登った後は、16kmに及ぶ長いダウンヒルが待っています。
今日のステージと同じく、逃げ切りが決まりやすいレイアウトと言えましょう。
第8ステージの翌日は、超級山岳アンドラ・アルカリスへの頂上ゴールとなる、ツール前半戦最大の山場が待っています。
なので、明日は逃げ切り狙いの選手にとっては、絶好の機会と言えましょう。
そこで、明日のステージ優勝予想はズバリ、新城幸也(ランプレ・メリダ)です!!!
ピレネーが得意、ダウンヒルが得意、という二つの要素を考えると、ひいき目なしに有力候補と言えましょう。
明日の第8ステージは、スカパー・J Sportsで20:55中継開始予定です。ゲストにジロ・デ・イタリアを完走した山本元喜選手(NIPPOヴィーニファンティーニ)が来るそうです!
・関連記事
*1:ちなみに、栗村さんの解説はとてもテンポよく面白いので、わたしは大好きです。栗村さんが悪いわけではないですし、クリノートは本人もネタにしています笑